料理家、写真家として全国を飛び回り、各地に根ざした食材や料理を食べてきたminokamoさんの、ごはん旅日記。
幼い頃の食の記憶、旅で出会った珍ごはんや地元の方々の触れ合いなど食の思い出を綴ります。
こんにちは、minokamoです。
今回ご紹介するのは、千葉県の房総半島で作られてきた郷土食、「さんが焼き」です。
温暖な気候の房総半島は、海沿いも緑豊富で美しい景色が広がります。
この辺りでは、アジ、イワシ、サンマなど、新鮮な青がたくさん獲れ、魚の郷土食もいろいろあります。イワシをおからで漬けた「イワシの卯の花漬け」は、私も大好きで地元のスーパーなどでも見かけます。
そして、みんな大好きなのがアジの「なめろう」なのでは。
三枚におろした新鮮なアジに、薬味と味噌を加えてトントン叩くと、なんであんなに美味しくなるのでしょう!
大人はお酒がすすんじゃいますし、育ち盛りのちびっこたちは、ご飯をもりもり食べられます!
美味しすぎて、お皿までなめてしまうから、「なめろう」の名がついたという説があり、それも納得。
さて、「さんが焼き」とは、この「なめろう」を焼いたものです。
昔、漁師が山へ仕事に行くときは、なめろうを持って山小屋で火を通して食べていたそう。このため「山家(さんが)」焼きという名前がついたそうです。
当時はホタテやあわびの貝殻に乗せて焼きました。
今回、地元の魚屋さんに「さんが焼き」を作っていただきました。
あっという間に三枚おろしにされたアジと、そこに味噌、長葱、生姜のみじん切りを加えて粘りがでるまで包丁でよく叩いてなめろうに。
それを丸めて紫蘇を巻き、フライパンで両面焼いたら出来上がり。
見た目は、大きなつくねか、ハンバーグのような形です。
火を通しているので、ねっとりした旨さのなめろうとは違い、ふんわり軽やかな口当たり!アジの旨味もしっかり感じられます。
「アジじゃなくても、サンマやイワシで作っても美味しいよ」と奥様が教えてくれました。
皆さんも、青魚が手に入ったときは、ぜひお試しくださいね。
岐阜県美濃加茂市出身。料理家、写真家。「ごはんで町を元気に!」をテーマに、各地でその土地に根差したメニュー開発、キッチンプロダクトのフードコーディネート、雑誌へのメニュー提案ほか、各世代がつながるイベントも開催。味噌料理も得意とする。各地の郷土食を取材し、紹介する活動も行っている。