地域発のumamiの素材「きのこ」を訪ねて
vol.2 エノキタケ編

大手きのこメーカーも介入できないエノキタケ栽培の世界

続いて訪ねたのは、長野県中野市のオギワラグループのエノキタケ工場。エリンギ工場に比べて室温が冷んやりしているのは、エノキタケが低温を好むからです。
ここでは20日間かけて培養した~、芽だし室で2週間程度、さらに生育室で2週間かけて生育させ、収穫しています。

「最初は外気と変わらない15℃ほどの室温で芽出しをし、少しずつ温度を下げて、最終的に4℃にします」と説明してくれたのは、生産部副部長の荻原敏之さん。

また、エノキタケの茎の長さを揃えて生長させるためには、温度や湿度のほかに、光と風の流れも重要だそうです。そのため「抑制機」とよばれる移動型の照明・送風装置でまんべんなく光と風を当て、生育を調節して形を整えます。そのバランスはとても絶妙。365日休むことなく複数の研究員が工場を訪れ、生育環境を微調整しています。

さらに、もっとも大変なのが、すべての培地が同じ環境下で生育されるよう、生長具合を確かめながら1本1本のビンの配置を入れ替えること。1室に並ぶ培養ビンは8万2000本。これを人の目で確かめています。

「このように、エノキタケの生産は非常に手間がかかり、気も使います。当社も50年栽培していても、まだまだ研究開発中。だから、大手きのこメーカーでは生産をしていないんです」(荻原さん)

生産部副部長の荻原敏之さん。

芽が出たエノキタケはまっすぐに伸びるよう、穴の空いた青い筒を1本ずつ手で被せていきます。昔はロウ引きの紙をクリップで留めていたため、この作業はいまも「紙巻き」とよばれています。

筒の穴の位置も研究の結果によるもの。筒の上部2か所に小さな切り込み(くぼみ)があるのも重要なポイントだそう。

こうして生長し、収穫期に達したエノキタケは手作業で筒を外し、2回の検品を経て自動収穫機で収穫されます。この一連の収穫時間はわずか3分。収穫後はすぐに冷蔵庫に運ばれ、再び冷たい環境下で出荷を待ちます。

この工場では日本全体の生産量の5%に当たる6000〜6500トンのエノキタケを年間で生産している。

さらに、荻原さんがこだわるのは、毎日の掃除。従業員は8時間の勤務時間のうち2時間をかけて掃除をし、残りの6時間で収穫作業を行います。芽出し室や生育室も、中身が運ばれるたびに壁から床までくまなく掃除をします。

「きのこは雑菌に弱いので、掃除は徹底しています。エノキタケは味のおいしさが大切なのはもちろん、少しでも形が悪いと売れません。『きれいでおいしそう』な見た目にたどり着くため、掃除も細部まで手を抜けないのです」(荻原さん)

ところで、エノキタケといえば、うまみ成分であるグアニル酸が豊富なきのことして知られています。そのうまみは加熱調理することでより増え、グルタミン酸が多く含まれる魚介類と一緒に煮込めば、さらにうまみの相乗効果が楽しめます。

「私は特におでんがおすすめです。エノキタケだけでなく、エリンギやぶなしめじも入れて作るといいですよ」(荻原さん)

また、夏場は消費量が伸び悩みがちですが、めんつゆを使って簡単に作れる「なめたけ」や、電子レンジでエノキタケをさっと加熱し、きゅうりやミョウガといった夏野菜と一緒に浅漬けにするのもおいしいのだとか。

さらに、きのこ販売課の田中さんがおすすめするのは「エノキタケの株ステーキ」。エノキタケの株の石づきの上から2〜3cmの部分を切り、ステーキのように焼きます。

「エノキタケの根元は捨ててしまう方が多い部分ですが、特に糖度が高く、甘みがあっておいしいんです」(田中さん)

実は荻原さんも知らなかったという、この情報。知る人ぞ知る、エノキタケのおいしいポイントです。

地域発のumamiの素材「きのこ」を訪ねて
vol.1 エリンギ編
vol.2 エノキタケ編
vol.3 ぶなしめじ編
vol.4 なめこ編