Vegetable Hello!
~ 野菜のひろばへようこそ!~

umamiのおべんきょうprojectの連載は、
農家さんや料理家さんなど食の現場に関わる方々から
“おべんきょう”になるお話しをうかがいます。

この連載は、umamiのおべんきょうprojectが注目している、野菜若手農家のキレドさんが担当します。キレドさんは千葉で150種もの野菜を育てている野菜農家さんで、今回は自己紹介がてら、umamiのおべんきょうprojectを主催している“やまや”の『うまだし』を使った、簡単でおいしいレシピも紹介してくれました。
photo by Shuhei Yoshida

vol.3 茄子のお話

今年の8月は天候がほんとうにおかしかったですね。特に日照時間の短さは際立っていました。なんでも東京では計測開始以来最低の日照時間だったとか。ちまたでは野菜の生育が悪く、市場の値段も高騰しているようです。

直販しかしていないので市場とは全く関係ないキレドですが、もちろん野菜の成長速度は遅くなりました。特に暑いのが大好きなピーマン系、オクラ、バジルなどはこの日照不足のせいで成長は緩やかです。でも、成長は穏やかですが味は変わらず。畑の野菜のたくましさに関心しています。

畑で成長する茄子

さて、今回は茄子のお話です。

実はたくさんの品種がある

茄子というとスーパーに売っているたまご型の茄子を思い浮かべるかと思います。でもあれは茄子のほんの一部。日本で茄子が何種類あるかご存知ですか?スーパーで見かける珍しいものはせいぜい長なすくらいかと思いますが、なんと、日本だけでも80種類以上あると言われています。地方の道の駅にいくといろんなご当地茄子が売られていますよ。

水茄子
米茄子
長茄子
丸茄子
小茄子
賀茂茄子
十全茄子
大長茄子
ほか、、、

と、あげたらきりがありませんが本当にたくさんの種類があります。日本でそうなんですから世界を入れたらそれはそれは大変な種類になります。1000種類以上はあると思いますね。

それぞれに合った調理法がある

と、たくさんの種類がある茄子ですが、味や食感、火入れした感じなど、全てが少しずつ違います。たくさんあるなかからどんな品種の茄子を育てるのも農家の自由ですが、どんな料理を作りたいのか、その料理ではどんな調理をするのか、その調理法に合う茄子はどれなのか、そこまでを考えて作付けすることがキレドではとても大切だと考えています。これはどの野菜でも同じことです。

ですからキレドにとってはとにかくおいしい料理を食べるのが大切!(まぁ私の趣味でもありますが笑)おいしい発見があればあるほど作りたい種類も増えていきます。

それを踏まえた上で、現在は以下の3つの調理を主眼に品種を選んでいます。

・生食系
・炒め系
・素揚げ・煮込み系

生食系は主に水茄子を作っています。水茄子系だけでも相当な種類がありますが、キレドで作っているのは泉州水茄子という大阪の茄子で水茄子系統では元祖のものです。

水茄子

丸い形が特徴でとても水分が多い茄子です。その水分の多さから生で食べてもりんごのような食感があります。キレドのものは強い甘みが茄子の風味よりも勝っていてデザートにも使えるほどです。反対に水分がもともと多いため、煮込んだり炒めてもなかなか味が茄子に入っていきません。生食専用の茄子といえますね。

そのまま手で割いて食べるのが大阪流ですが、一口大にしてから生ハムのような塩気のあるものとオリーブオイルでマリネして食べれば、強い甘みとほんのりとした茄子の苦味が生ハムの油と塩気と相まって口いっぱいに広がり心まで幸せな気持ちで満たされるのは間違いありません。

炒め系はひもなすという茄子を育てています。ひもなすは中国が原産と言われている茄子。麻婆茄子などによく使われます。

ひもなす

水分が少なく煮崩れしにくいのが特徴なのですが、これが炒めるのにはもってこいなんです。水分が少ないためにスポンジのようにソースやスープを十分に吸収し、食べるとジュワッとソースが茄子からあふれてくるのが特徴です。トマトや青魚と炒めたひもなすを食べると、なすからトマトと青魚、そしてなすの風味が混ざったスープがジュワッと口いっぱいに広がり心まで幸せな気持ちで満たされるのは間違いありません。

素揚げ・煮込み系は米茄子が最適です。大きな茄子でアメリカが原産。知らない人も多いようですが、だから「米」茄子と呼ばれているんですね。

米茄子

火を強く入れるととろとろになるのが特徴で、これが煮込みや素揚げに最適です。カリッと素揚げると外はカリカリなのに中はトロットロ。茄子の風味も強くとてもおいしいです。煮込んでもとてもおいしくひき肉などと炒め煮込むのが簡単でとてもおいしいです。少し焦げ目がつくくらいまで炒めた豚ひき肉に刻んだ米茄子と水を加えて煮込むと米茄子の強い風味がとろみとともにスープに溶け込み、食べれば一緒に煮込んだ豚肉ととろとろになった茄子が口いっぱいに(以下略)。

キレドの茄子ならではのアクのなさ

茄子は切ると切り口が黒くなることで有名ですね。どの料理本を読んでも切ったらまず水にさらしましょうなどと書いてあります。これは黒くなる理由でもあるアクを水にさらすことで取り除くという意味があります。アクは色が悪いだけでなく強いエグみがあり、これが味を悪くするからです。

しかし、水にさらせば茄子の栄養分やうまみまで抜けていってしまいます。水にさらさずにすめばそれにこしたことはありません。

実はこのアクは肥料のあげ過ぎから出てきます。肥料をあげ過ぎるということは人に例えればごはんの食べ過ぎということ。そんな状態で健康な野菜ができるはずがありません。その不健康な状態がアクとなって現れるのです。キレドではそのアクが出ないように肥料をあげ過ぎずに育てることを大切にしています。(かといって全くあげないと美味しくならないのでそこが難しいところなのですが)

そうしてゆっくり育てた野菜はアクが出ません。その証拠にキレドの茄子は切り口がほとんど黒くならないのです。そんな茄子であれば生食でも水にさらさずにおいしく食べることができます。

キレドの茄子は時間がたっても切り口が白いまま

茄子が嫌いという人はひょっとするとこのエグみが嫌いなのかもしれませんね。茄子が嫌いな人ほどキレドの茄子を食べてみてほしいです。きっと茄子の概念がくつがえると思いますよ!

ひもなすとうまだしとスパイスのパスタ

・ひもなすは3cm程度にぶつ切りし縦に切る。にんにくをスライスする。
・パスタを塩ゆでする。
・オリーブオイルをひいたフライパンでひもなすを塩で炒める。
・ひととおり火が通ったらフライパンに茹で汁とうまだしを加えて沸騰させる。
・水分が少なくなったら弱火にしてターメリック、カルダモン、レッドチリ(すべてパウダー)を加えてよく和える。
・茹で上がったパスタをフライパンに投入したらコモンセージとよく和え、盛り付けたらできあがり
キレド代表 栗田貴士 プロフィール

千葉県四街道市育ち
九州芸術工科大学大学院芸術工学専攻修士課程修了
学生時代の6年間を福岡市、ソフトウェアエンジニア時代の6年間を金沢市で過ごす。 金沢市在住中に親友の紹介で室矢シェフ(現イルガッビアーノ)、澤田シェフ(現オーミリュードゥラヴィ) と出会う。知らない野菜を数多く使った料理を食べ野菜の奥深さを知る。 その後、シェフに直接野菜を卸している白山市の農家中野禧代美さんの畑で梨のような大根を 食べてから人生が変わる。以降、おいしい野菜を求めて会社勤めをしながら家庭菜園をスタート。 約2年間、中野禧代美さんに師事。 農業を本業としたい気持ちが抑えられなくなり12年ぶりに故郷千葉へ戻ることを決意。 千葉県八街市のシェフズガーデン エコファームアサノにて浅野悦男さんに師事。 2011年、エコファームアサノ内で野菜と畑の個人宅配「キレド」を開業 2012年の終わりに地元である千葉県四街道市に移転し独立。現在、約150種類の野菜・ハーブを栽培している。 2013年7月、野菜のファストフードの移動販売「キレドファストベジタブル」を開業。 2015年4月、工房兼店舗「キレドベジタブルアトリエ」を千葉市若葉区小倉台に開業。
http://www.kiredo.com