この連載は、umamiのおべんきょうprojectが注目している、野菜若手農家のキレドさんが担当します。キレドさんは千葉で150種もの野菜を育てている野菜農家さんで、今回は自己紹介がてら、umamiのおべんきょうprojectを主催している“やまや”の『うまだし』を使った、簡単でおいしいレシピも紹介してくれました。
photo by Shuhei Yoshida
9月は少し日差しはさしましたがかなり低温でしたね。特に関東の3連休は大雨で気温が低かったです。しかもそのあと気温がかなりあがったもんですから、体調をくずす方も多かったんじゃないでしょうか?気温差が体調に影響するのはよく知られたことだと思いますが、これは野菜もまったく同じなんです。気温が高かったあとに急に寒くなったりすると気温差に耐えきれず葉っぱが白くなったりすることがあります。そうなると成長に影響が出てしまうんです。
そうならないように不織布をかけたりと体温(野菜温?)を調節してあげる必要があります。毎日の天気予報は農家にとって欠かせないものなんです。秋は特にこまめな調整が必要ですね。
なんだか枕が毎回天気のことではじまりそうなこのコラムですが、今回はみんな大好き(?になってほしい)カリフラワーのお話です。
カリフラワーというのは非常に歴史の長い作物なのですが、あまり食べてないという人が多いようですね。ステーキに添えられたあのおいしくないやつでしょ?と、マイナスイメージを持っている人も多いみたいです。
また、世の中にはブロッコリー派なのかカリフラワー派なのかという派閥闘争まであるようです。カリフラワーをマルシェで紹介していると「あらやだ、私ブロッコリー派なの」と最初から見る気がないお客さまもとても多く見受けられます。
そして私にとってとても残念なのが、圧倒的にブロッコリー派のほうが多い!という事実なんです(クリタ調べ)。ちょっと待って!まずはちゃんと食べてみて!今回はブロッコリーも大好きな私ですが、あえてカリフラワーの立場に立って擁護していきたいと思います。
似ていると思っているひとも多いようですが、この2つは結構別物なんです。
一番日本人が知らないのは、生で食べられるということだと思います。いろんな人に話を聞いても、いやいやいや〜という顔をされます。ではどんな食べ方をしてるんですかと聞くと5分くらい茹でるという答えが。
いやいやいや〜、実はそれが一番やってはいけない食べ方なんです。茹で時間が5分程度だと食感がグニュッとしてるのに嫌な香りが残っていておいしくありません。これがみなさんがカリフラワーよりもブロッコリーを選ぶ一番の原因じゃないかなと思います。
生で食べるのは欧米では普通にされていますがポイントがあります。必ずスライスしてから調理すること。カリフラワーという野菜は外側に強い苦味を持っていて、中が甘い野菜です。小房にわけてそのまま食べると苦味ばかりが口に広がってしまうんです。甘い中の部分が舌に当たるようにスライスしてあげることが重要なんです。
そのあとはオリーブオイルと塩、あればタコや青魚、ケッパーなどでカルパッチョにしてもいいですね!
苦味が苦手なかたは小房にしてから30秒ほど湯がくといいと思います。苦味が薄くなり甘味がひきたちます。私はカリフラワーの適度な苦味が好きなので、サラダの場合はもっぱら生で食べています。
どうですか?ブロッコリーは生で食べれないですよね???
5分ほど茹でるのはよくないと言いましたが、柔らかくしてはいけないということではありません。柔らかくしてマッシュしてもとてもおいしいです。
できれば湯がいて柔らかくするのではなく、フライパンで塩とオイルで炒めてから水を入れて煮込んでいく炒め煮がいいと思います。炒め煮ならカリフラワーの成分が湯に出ていくことなくフライパンに残るからです。
12,3分くらい炒め煮こむと木べらでもつぶれるほど柔らかくなってきます。水分を飛ばしながらよくマッシュすればおいしいソースのできあがりです。魚のムニエルのソースにしても、パスタソースにしてもいいですよ!
どうですか?ブロッコリーはマッシュして食べないですよね????
(・・・でもマッシュではないですが、同じように調理してぐちゃぐちゃにして食べるおいしいイタリア料理があります(笑)。それはまたの機会に。)
白いのが一般的なカリフラワーですが、ベージュ、パープルなどの色付きのものもあります。パープルのものはヨーロッパではよく見かけるものです。
パープルは火入れすると色が変色してしまうので、生で食べるのがおすすめです。スライスするときれいな模様が出てきます。ベージュのものは生でも炒め煮ても色味よくおいしいです。
最近スーパーでも見かけるようになったのが幾何学模様が特徴的なロマネスコ。美しいという人もいたり気持ち悪いと言う人もいたり(笑)。
自然がこんな形をつくるなんてと私はいつも美しいなと思っています。これも一般的な形とは違いますがカリフラワーの仲間です。生でも炒め煮でもとてもおいしいですよ!
どうですか?ブロッコリーはみんな緑色ですよね???
さまざまな種類があるカリフラワーですが、そのほとんどが暑さにも寒さにも弱い野菜です。比較的寒さに強いのがロマネスコですが、それでも何度も霜に当たれば食べる部分はだめになってしまいます。
それならば霜が降りる前に収穫しようと早く植えると、厳しい暑さに合い生育不良になってしまう、キレドの畑がある千葉県北西部では露地では作りにくい野菜だと言えると思います。
それでも・・・。やっぱり食べたい!!(笑)
カリフラワーのあの風味・甘味を思い出すと作らないわけにはいかないんです!この風味を知らない人がたくさんいるなんて!本当にもったいないことなんです!
今回のお話でカリフラワーはブロッコリーとはそもそも食べ方が違うんだとわかっていただけたでしょうか?次にブロッコリーと比べる機会があればぜひカリフラワーのほうを試してみてください!
千葉県四街道市育ち
九州芸術工科大学大学院芸術工学専攻修士課程修了
学生時代の6年間を福岡市、ソフトウェアエンジニア時代の6年間を金沢市で過ごす。
金沢市在住中に親友の紹介で室矢シェフ(現イルガッビアーノ)、澤田シェフ(現オーミリュードゥラヴィ) と出会う。知らない野菜を数多く使った料理を食べ野菜の奥深さを知る。
その後、シェフに直接野菜を卸している白山市の農家中野禧代美さんの畑で梨のような大根を 食べてから人生が変わる。以降、おいしい野菜を求めて会社勤めをしながら家庭菜園をスタート。
約2年間、中野禧代美さんに師事。
農業を本業としたい気持ちが抑えられなくなり12年ぶりに故郷千葉へ戻ることを決意。
千葉県八街市のシェフズガーデン エコファームアサノにて浅野悦男さんに師事。
2011年、エコファームアサノ内で野菜と畑の個人宅配「キレド」を開業
2012年の終わりに地元である千葉県四街道市に移転し独立。現在、約150種類の野菜・ハーブを栽培している。
2013年7月、野菜のファストフードの移動販売「キレドファストベジタブル」を開業。
2015年4月、工房兼店舗「キレドベジタブルアトリエ」を千葉市若葉区小倉台に開業。
http://www.kiredo.com