心とカラダを育てる食卓
vol.1 乳幼児期は「だし」で味覚を育てよう

食育料理教室の運営をするほか、イベントやメディア出演を通じて、様々な食育活動を行う管理栄養士で上級食育アドバイザーの板垣好恵さんが、子どもの心とカラダを健やかに育む食体験の大切さをお伝えします。
親子で味わいたい「うまみレシピ」もご紹介。ぜひ親子でお試しください!

 

はじめまして! 板垣好恵です。
「食べること」の役割は、単なる栄養補給だけではなく、食事を通した幸せな経験から豊かな心を育て、五感を働かせて感じられる「味覚」を育てることにもつながります。
この連載では、子どもの心とカラダ、味覚をすくすく育むための食事や栄養についての知識・アイディアをご紹介していきます。

初回は、乳幼児期の食事とだしのうまみについて。現在、3割の子どもが味覚を正しく認識できないと言われています。今回は「だしの活用」に着目して、子どもの味覚を育てるポイントをお伝えします。少し小難しい話も入ってきますが、どうぞリラックスした気持ちでお読みいただけると嬉しいです。

子どもの味覚は敏感!

赤ちゃんは、生まれながらに味覚をもっていて「甘味・苦味・酸味・塩味・うま味」という5種類の基本味を感じることができます。
人間は口の中にある「味蕾」という味細胞で味を判断していますが、その数は大人が約2000個に対し、乳幼児はなんと1万個!つまり赤ちゃんは、大人の5倍も味に敏感ということです。乳幼児期は、素材の味やうまみで十分おいしさを感じられるので、調味料はほんの少しの量で良いのですよ。「味付けをたくさんしてあげた方がおいしいのでは?」と思われるかもしれませんがそんなことはありません。子どもの食事は、できるだけ薄味を心がけてあげましょう。

乳幼児期の味覚形成

味覚は3歳までに急速に形成され、10歳頃にはおおむねベースがつくられます。この時期にいろいろな味を教えてあげて、味覚を発達させましょう。逆に、この頃に塩分の高い味付けや甘いものばかりの食生活に慣れてしまうと、味覚が正しく形成されない危険性も。うまみなどの繊細な味わいがわからず、大人になってからも無意識に濃い味を好むようになってしまいます。

味覚形成のキホンは薄味の料理!

味覚は、聴覚や触覚などと同じ「感覚」なので、味覚を育てるためには感覚に敏感になることが大切です。食べ物を口に入れ、どんな味がするのか?風味や後味は?と感じ、考えることで味覚は育っていきます。濃い味の食べ物は口に入れた瞬間に「しょっぱい!甘い!」とすぐにわかってしまいますよね。薄味であれば、噛むことで味を感じて「ほんのり甘いな、うまみを感じるな」などと気付くことができます。また、食品添加物の刺激も味覚を狂わせる原因のひとつと言われています。素材の味を生かした薄味の料理こそが、味覚形成のキホンだと覚えておいてくださいね。

「だしのうまみ」を活用しよう

そこで、毎日の食事に活用したいのが「だし」です。
かつおや昆布、野菜などからとるだしを料理に使うと、“だしのうまみ”のおかげで、調味料をほとんど使わなくてもおいしく食べることができます。
「うまみでそんなにおいしさが変わる?」と思われる方もいるかもしれません。
うまみは、甘味や塩味と同様に、生まれながらに人間がおいしいと感じる味なんです。特にかつおだしのうまみは「やみつき食材」と言われるほど、くり返し与えてあげるとやめられなくなる魅力があることがわかっています。乳幼児期からだしの味を知り、そのうまみを記憶させると「食品がもつ自然なうまみ」をきちんと判断できる味覚を育てることができますよ。

【だしのうまみ活用例】

・おかゆ、炊き込みごはん、雑炊
・うどんのつゆ
・煮物全般
・あんかけ
・みそ汁、スープ、ポタージュ
・おひたし、ごま和え、白和え  など

 

離乳食期はだし汁のみで十分ですし、幼児期ではほんの少し調味料を使って味に変化を付けてあげてもよいですね。子どもは大人の5倍も味覚が敏感ですから、調味料は最低限に。「だしのうまみで味付けをする」を心がけてみてくださいね。

親子でおいしい「うまみレシピ」

さまざまな素材に含まれるうまみをかけ合わせた、親子で一緒においしさを味わえるレシピをご紹介します。うまみの相乗効果の活用で、塩分控えめでも満足感はバッチリ!おとなの健康維持にもおすすめなヘルシーレシピです。

豚しゃぶのトマトドレッシング

豚肉のうまみ「イノシン酸」×トマトのうまみ「グルタミン酸」でうまみUP!
さっと茹でて冷ました豚肉とお好みの野菜に、ミニトマトの手作りドレッシングをたっぷりかけていただきます。夏本番の今の時期に、さっぱりと食べられる1品です♪

<材料:2人分>
豚バラ肉 100g
レタス・きゅうりなど お好みの量
[ドレッシング]
ミニトマト(8等分) 8個
白ねぎ(みじん切り) 5cm位
レモン汁 小さじ1
しょうゆ 小さじ1/2
きび砂糖 小さじ1/4
オリーブオイル 大さじ1
おろししょうが 少々
塩・こしょう お好みで各少々

 

<作り方>

① 豚肉はひと口大に切って、熱湯で茹でる。ザルにあげてよく冷ます。

② 野菜は食べやすい大きさにカットする。

③ ドレッシングを作る。
ボウルに、ミニトマト・白ねぎ・その他の調味料を全て加えてよく混ぜる。

④ 皿に野菜・豚肉を盛り、ドレッシングをかける。

板垣好恵 プロフィール

管理栄養士/上級食育アドバイザー
全国展開する料理教室にて、料理・パン・ケーキの講師業と集客営業に従事。本社へ異動後は管理栄養士としてレシピ本出版、講演、食事指導、法人タイアップ企画など多数事業に携わる。現在は、食育活動を軸としたイベント出演、レシピ開発、執筆、保育園の選任管理栄養士を行う傍ら、食の専門家を集めたユニットFoodRingの代表を務める。2019年より土浦にて食育料理教室「ぼくらのキッチン」を運営。

◆食の専門家ユニットFoodRing
https://foodring.jp/

◆食育料理教室「ぼくらのキッチン」
https://www.bokurano-kitchen.com/