恵みのくにへ。
vol.7 ~夏の味覚「枝豆」産地を訪ねて~

野菜作りや農業で繋がる「縁」を大切にした農縁プロジェクトをはじめ、テレビやラジオで活躍中の川瀬良子さんが、豊かな食や暮らしが息づく地「恵みのくに」を訪れ、人や食との出会い、さまざま発見をレポートします。

 

こんにちは。川瀬良子です。

暑い季節が近づいてきましたね。
八百屋さんやスーパーに並び始めた枝豆を見て「夏はすぐそこ!」と実感。
私は、夏がちょっと苦手なんですが、大好きな枝豆の季節♪と思うと、楽しみになります。

枝豆の産地と言えば、兵庫(丹波の黒豆のイメージ)。と漠然と思っていたのですが、
枝豆は全国的に栽培されていて、いくつかデータを見てみると収穫量や出荷量1位は千葉県が多いようです。
千葉県の中でも野田市が枝豆の一大産地と聞いてびっくり!
私が今暮らしている東京から電車で1時間程で行ける距離。千葉県のキャラクター、チーバくんの鼻の部分が野田市です(笑)
早速、野田市の枝豆畑へ行ってきました!

「キッコーマンもの知りしょうゆ館」のすぐそばには、巨大なサイロが…

 

野田市と言えば・・・枝豆ではなく、大豆を使った「醤油」の産地、ということは知っていたのですが、実際に野田市駅を降りると、キッコーマンさんの大きな工場が見えました。

工場内には「キッコーマンもの知りしょうゆ館」があって、お醤油ができるまでの工程を見学できるそうですよ。

野田市で枝豆栽培が始まったのは昭和30年頃から。
枝豆は収穫してからすぐに鮮度が落ちてしまうため、大消費地の東京に近い野田産の枝豆は高い評価を受けてきたそうです。

なんと市内を走るコミュニティバス「まめバス」の屋根には「まめ」がのっています。
さやに「まめバス」の文字が。かわいぃ~!
「小回りのきく小さいサイズのバス」「市民にこまめに乗ってほしい」や、「全国有数の枝豆の産地」などの意味が込められているそうですよ。
さすが、枝豆の産地!

鮮やかなチェックのつなぎがおしゃれ!穏やかな口調で、よく笑う山田さん。

 

今回訪れたのは、枝豆農家「実のる屋」さんの畑です。
代表の山田実さんにお話をお伺いしました。

実のる屋さんはいくつか畑を持っていて、全部で1500坪の畑で約4万本の枝豆をお一人で作っているそうです。
この規模でも、市内の枝豆農家さんに比べたら小規模なのだとか。

実がぷっくりしてきたら収穫のタイミング!

 

山田さんが育てているのは、「サヤムスメ」(大莢で実入りが良い、野田で一番多く作られている品種)、「湯あがり娘」(香ばしさもある茶豆風の味わい、ゆであがった莢と実は鮮やかな緑色)、「味風香」(甘味とコク、芳醇な香りが楽しめる)の、3品種を育てているそうです。

枝豆のさやをよく見てみると白くてふわふわの産毛がビッシリ。
これが新鮮な証拠なんだそう。この姿は畑以外では、なかなか見られないですね~

種まきは、3月初旬から6月初旬までの間で、なんと出荷時期をずらすため5日おきに行っているそうです。

野田市出身の山田さんは、枝豆を作るようになって3年目の若手農家さん。
それまではアパレル関係のお仕事に就いていたそうです(だから農作業着がオシャレなんですね~)。
どうして枝豆農家さんになろうと思ったのでしょうか?

「登山が趣味で、全国のいろいろな山に行きながら田舎の風景に癒されることが多かったんです。そこで、畑の採れたて野菜を買って帰るようになったり、農業体験にも行くようになって、農業に興味を持つようになりました。それで、自分でも農業を始めてみることにしたんです」

そして、地元・野田市の枝豆農家さんから技術を学ぶために3年間修業し、枝豆農家となった山田さん。

「農業という仕事にストレスはないんですけど、作物なので、ちゃんとできるまで不安や心配の連続です。病気が最初に出た時は、全部病気になったらどうしよう・・・って眠れないときもあります。何日かは心配で、日が暮れるまで畑を見てました(笑)」

大変なことも、笑い飛ばす山田さん。
それだけ手をかけていたら、枝豆が可愛いだろうな~。

「自分で育てた枝豆は愛おしいですよ。もう娘みたいな感じで・・・出荷するときは娘を嫁に出す感覚ですよ」

言われてみれば・・・枝豆の品種名には、サヤムスメ、湯あがり娘など「ムスメ」がついているものが多いですよね(笑)。ということは山田さんは、枝豆達のお父さん!深い愛情を感じました。

ところで、現在、野田市内の枝豆農家さんは高齢化が進んでいるそうです。
「自分は、ひとりで畑をやっているので、規模拡大は難しいのですが、諸先輩に教えて頂きながら試行錯誤し、枝豆の質を高めることに力を入れていきたいと思っています」
山田さんのような若い農家さんが増えると心強いですよね。

山田さんが大切に育てた“ムスメさん”を、収穫させて頂きました(笑)

まず、山田さんの収穫の様子を見せていただいたら、そのスピード感にビックリ!
株元をもって少し回転させるようにして根っこごと上に引き抜く。これをザッ!ザッ!とテンポよく進めていきます。
私がやってみると、同じように株元を持って引っ張っているのですが、潔さが足りないのか!?テンポ良く進めるのは難しい・・・。

細い枝にさやがたわわについていて、ぷっくりと膨らんだまめがいっぱい!
ふわふわの産毛がかわい~!
枝豆ってかわい~!と、初めてこんなに思ったかも(笑)

ちなみに、野田産の枝豆は枝を付けたまま出荷するのが特徴とのことです。
「枝が付いている方が鮮度が保たれ、よりおいしい枝豆を届けることができるんです」と山田さん。

野田市の枝豆農家さんは、お客様に良品をお届けするため、ひとつひとつ検品して葉を取り、根を切ったり、手がかかるすべての作業を機械は使わずに行うそうです。枝豆を育てるだけでなく、出荷までも、手間暇がかかっているんですね。

粒が大きい「さやむすめ」(右)、小ぶりの実がつまった「味風香」(左)。

 

なんと山田さん、畑の横に大鍋を用意していて、その場で採れたて新鮮な枝豆を茹でて下さいました!
枝豆は採った瞬間から鮮度が落ちていくので、「枝豆はお湯を沸かしてから採りに行け」という言葉があるくらいですからね~

いやぁ~これはうれしい!贅沢!

食べ比べてみたのは、サヤムスメと味風香。
まずはサヤムスメ。粒が大きいので豆の青い香りがダイレクトに感じられます。しかも、甘さが濃い!
味風香は、味と食感が甘いトウモロコシに似ていました!こちらも、おいしい~!

豆の香りと甘味をこんなに感じられるなんて!さすが採れたて!感動です!

また「実のる屋」さんでは、8月中旬まで畑で枝豆の直売も行っているとのこと。
「ずっと畑にいなくちゃいけないので大変なんですが、お客さんと話すのが好きなんです」

山田さんのお人柄だなぁ~。すぐに買いに行ける近所の皆さんがうらやましい!

この日も、私たちが畑で取材をしていると、常連客のおばあちゃんが来て「ここの枝豆おいしいよ~」と、山田さんに代わって(笑)宣伝してくださいました。
枝豆を茹ででいる時も、「直売始まったの?」とお客さんが集まってきたり。
地域のみなさんが、山田さんの枝豆を今か今かと心待ちにしていらっしゃるんですね。

人と接することが好きだという山田さん。
これからも収穫体験やイベントへの出店など、積極的に行って、地元のみなさんと交流しながら楽しく農業をしていきたいそうです。

地元を愛して、枝豆を娘のように愛して、地元のみなさんにも愛される山田さん。
山田さんの笑顔が連鎖して、畑は常に笑い声に包まれていました。

枝豆産地で見つけた「恵みのくに」は、若い農家さんが支えていました。
実のる屋の山田さん、ありがとうございました!

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衣装協力:AIGLE

キッコーマン「もの知りしょうゆ館」
https://www.kikkoman.co.jp/enjoys/factory/noda/index.html

川瀬良子 プロフィール

静岡県静岡市出身。
タレント、ラジオパーソナリティ。
16歳でモデルデビュー。2010年 NHK 「やさいの時間」の出演をきっかけに、野菜作りや農業への興味が深まり、農業の活性化や農家と消費者を繋ぐ「農縁プロジェクト」を立ち上げる。現在、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」TFM&JFN「あぐりすむ」「あぐりずむ WEEKEND」「暮らしのいきものずかん」などのパーソナリティとしても活躍。自身のプランター栽培での"つまずき"を元にした書籍「川瀬良子のプランター野菜」発売中。