Vol.2 おむすびの話
~鮭甘酒漬け×紫米~

どこででも手軽に食べられて満足感もたっぷり。
誰もが思わず笑顔になる手づくりのおむすびは、
瑞穂の国に生まれたわたしたちのソウルフードかもしれません。

シンプルな塩むすびのおいしさも格別ですが、
“うまみの魔法”を少々プラスして旬の野菜でつくった“おとも”を添えれば、
おもてなしにも使えるちょっとしたご馳走に早変わり。

農家の方が丹精込めてつくったお米を
できるだけおいしくていねいにひとつに結んであげたい。
そんな思いから生まれた料理家・佐藤裕加さんの、
しみじみとおいしいおむすびをご紹介します。

甘酒マジックで鮭がふっくらおいしくなる

料理家の佐藤裕加さんが住むのは鎌倉の海辺にあるシェアハウス。
最初は2~3か月のつもりだったのに
あまりにも居心地が良過ぎてもう3年になるとか。
「ひとり暮らしと違ってだらしなくできないのが逆にいい。
たまたま価値観が似た者同士なのもラッキーでしたね」

4人とも仕事を持つ忙しい女性たちですが、
“食”をとても大切に考えていることもそのひとつ。
仕事柄、佐藤さんが“料理番長”になることが多くても、
食材の提供、買い出しや準備、後片付けなど、
手際良くみんなで進めるのでストレスはゼロ。
むしろヒントをもらったり素直な意見が聞けたりで、
メニュー開発や料理試作の仕事も多い佐藤さんにとっては
とてもいい刺激が得られるようです。

なるほど、共通スペースであるリビングには、
梅の酵素ジュースやウコンのピクルス、
乾燥ゴボウ、黄唐辛子のオイル漬けなど、
各自思い思いにトライした個性的な保存食がずらり。
賑やかな食卓での光景が伝わってきます。
年齢も出身地もバラバラな4人なのに、
「おかえり、と言い合えるのがなによりの幸せ」と
つかず離れずのいい関係でいられるのは、
できるだけ一緒に食卓を囲むという“決まり”が大きいのかもしれません。

今回のおむすびの具にした鮭の甘酒漬けも、
いま甘酒が人気だよねという食卓での会話をヒントに
佐藤さんが塩麹の替わりに試してみたもの。
米麹からつくる甘酒は“飲む点滴”ともいわれますが、
肉や魚をふっくら柔らかくする効果もあるんだとか。
また紫米もミネラルや食物繊維が豊富。
玄米の4倍ものポリフェノールを含むそうです。
甘酒効果でうまみとコク、ふっくら感が加わった鮭と、
もちもち感がクセになる紫米入りごはんの組み合わせは、
夏バテぎみの身体にも良さそうですね。

「鮭の甘酒漬け」のつくりかた

生鮭は少々きつめに塩をして10分ほど置いてから、
余分な水分をキッチンペーパーで取り除き、甘酒に漬けて一晩冷蔵庫で寝かします。
塩鮭をそのまま甘酒に漬けてもいいけれど、できれば生鮭を使ってみてください。
200gの甘酒で生鮭3切れほどが目安です。

甘酒に漬けた鮭はグリルで焼くよりも蒸すのがお薦め。
よりふっくらとジューシーに仕上がります。
電子レンジ用の専用容器を使えば、
スプーンなどで甘酒を軽くぬぐってから一口大に切り、
2分ほど加熱すればOKと手間いらず。
これなら忙しいときでも安心です。
米麹の優しい甘味とうまみが加わった鮭で、
いつもの“鮭おむすび”が上等なご馳走に変わります。

紫米入りおむすびのつくりかた

紫米の分量は米1合に対し大さじ1杯程度。
おむすび用ならそこに塩を加え(米3合に塩小さじ1と1/2)
浸水時間も30分から1時間と少々長めにとってください。
これで1回目に説明したようなほんのり塩味がついた、
佐藤さん流おむすび用ごはんが炊き上がります。

濡れ布巾で拭いたまな板の上に、
小鉢にふんわり盛ったごはんをひとつずつ並べてから
ぬらした手でごはんを包み結びます。
手の中でころがすようにすれば形が整うので、できるだけやさしくリズミカルに。

“ごはん粒が呼吸できる感じ”を心がけると、
こんな丸くてふんわりしたおむすびのできあがり。
紫米は古代米の一種ともいわれており、
白米に少し混ぜて炊くとごはん全体がうっすら色づきます。
栄養価が高いうえにもちもちとした食感も加わり、
手軽にお赤飯感覚が味わえるのがいいですね。

中央をくぼませて蒸した鮭を乗せ、さらに全体をギュッと包みましょう。
最後に黒胡椒をパラリと振ってもおいしいですよ。

おむすびのおとも
うまみ+酸味で蒸し野菜をたっぷりと

仕事で料理の試作と試食を日々繰り返していると
もう何も食べたくないと思うこともしばしば。
でも佐藤さんは必ずごはんを多めに炊いておき
ちょっと小さめのおむすびをつくります。
「冷蔵庫にあるもので適当に結ぶだけでも
スタッフがちょこちょこつまんでくれて」
うーん、やっぱりおいしい! と喜んでくれるんだとか。
そうなると“おむすびのおとも”も用意したくなりますよね。
たとえば、蒸し野菜の和えもの。
簡単で箸休めに最適、しかも余り野菜を利用できます。
コツはだしパックの粉末と柑橘類を使うこと。
うまみプラス爽やかな酸味で食べ飽きないので、ぜひ試してみてください。

「蒸し野菜のライム醤油和え」のつくり方

今回の和えものは、キャベツ、シメジ、紫大根、ニンジン。
冷蔵庫に余った野菜を上手に利用して。
火が通りにくそうなものはせん切りにし
あとは食べやすい大きさにざくざく切りましょう。
電子レンジ用の専用容器を使えば、ゆでるよりも簡単です。
全体がしんなりする程度に加熱しますが
今日の具材だとだいたい1分から1分半程度。
それにだしパックの粉末と、ライムを絞って薄口醤油と和えるだけ。
ライムがなくても、スダチやユズ、レモンなどなんでも大丈夫。
フレッシュな柑橘類のそれぞれの風味を楽しんでみてください。
まただしパックは1度だしを引いたものを再利用。
〈うまだし〉は日本の自然の恵みのような“うまみ”なので
最後までキチンとおいしくいただきたいものですね。

博多の幸 うまだし:http://www.umadashi.jp

佐藤裕加さん プロフィール

東京都渋谷区出身、鎌倉市在住の料理家・フードコーディネーター。 身体に良い調味料、自家製の保存食を活かしたヘルシー料理を提案。 幼い頃、当時まだ珍しいプロの女性料理人だった祖母の料理に感動したのが食の原点。現在は自立した女性4人で海辺のシェアハウスに住み、昔ながらの食を大切にした暮らしを実践中。