Vol.4 おむすびの話
~デュカ(エジプト塩)×玄米・海苔〜

どこででも手軽に食べられて満足感もたっぷり。
誰もが思わず笑顔になる手づくりのおむすびは、
瑞穂の国に生まれたわたしたちのソウルフードかもしれません。

シンプルな塩むすびのおいしさも格別ですが、
“うまみの魔法”を少々プラスして旬の野菜でつくった“おとも”を添えれば、
おもてなしにも使えるちょっとしたご馳走に早変わり。

農家の方が丹精込めてつくったお米を
できるだけおいしくていねいにひとつに結んであげたい。
そんな思いから生まれた料理家・佐藤裕加さんの、
しみじみとおいしいおむすびをご紹介します。

お米丸ごとのうまみを玄米で。

料理家・佐藤裕加さんは玄米が大好き。
身体に良いのはもちろんのこと、
あの独特の香ばしい風味と甘味がお気に入りだとか。
実は、第1回で紹介した“糠ふりかけ”も、
玄米は面倒だし硬くて食べにくいという人向けに考えたもの。
でもできれば、ぜひ玄米を試してみて、と佐藤さん。
肌や身体の調子が整うという手ごたえを感じているからです。
いまは玄米でもいろんな品種のものが入手しやすく、
自分の好みの食感に合わせて選べるし、
炊飯器の玄米モードで簡単に柔らかく炊けるはず。
おむすびだっておいしく結べるので、
たまにはお米丸ごとの風味を楽しんでもらいたい。
そんな思いを込めて佐藤さんが今回提案してくれたのが、
デュカを混ぜ込んだ玄米おむすびです。

万能スパイス・デュカと玄米は相性抜群

デュカ(エジプト塩)はいま話題の万能スパイス。
クミンシードとコリアンダーシード、ごま、ナッツ類と塩が基本形で、
エジプトでは家庭ごとにレシピが違うとか。
佐藤さんも友人にもらったものがとてもおいしくて、
自分も好みの味でつくってみたいと、
スパイスやナッツのブレンドをいろいろと試してみたそうです。
フードプロセッサーを使えばすぐにできるけれど
「力や時間がかかっても、香りの立ち方が全然違います」と
佐藤さんは、敬愛する祖母の愛用品だったすり鉢で、
ひとつずつていねいにすりつぶしています。
デュカとはアラビア語の「つき砕く」の意味なので、
エジプトの女性たちもきっと同じ思いでつくっているのでしょうね。

この手づくりのデュカは、鎌倉のシェアハウス仲間にも大好評。
ひと振りでエキゾチックな風味が楽しめて、和洋問わずどんな料理にも意外と合うので、
食卓に出しておくとすぐになくなってしまうほど。
パンやサラダはもちろん、肉や豆腐、ご飯にかけてもおいしいし
ナッツを粗めにしておけば、おつまみにもぴったり。
またポテトサラダに混ぜ込んで、オリーブオイルとライムで仕上げたりと、
いつもの料理をちょっと変身させるのにもとても便利。
玄米も、スパイスやナッツとの相乗効果なのか、
デュカを混ぜると、素朴で香ばしい“変わりごはん”という印象に。
今回はさらに海苔の風味とうまみをプラスして、
銀シャリ派でもすんなり食べられるおむすびになりました。

「デュカ」のつくりかた

各スパイスと粗めに刻んだナッツ類、自然塩を用意します。
つくりやすい分量はクミンシード大さじ1、コリアンダーシード大さじ2、
黒煎りゴマ大さじ3、ナッツ類小さじ2、自然塩適量。
ナッツ類はアーモンド、カシューナッツ、クルミなど好みのものを。
それらを別々にフライパンでから煎りしますが、
塩以外は軽く香りが立つ程度で大丈夫。
くれぐれも焦がさないように注意してください。
から煎り後、すり鉢でそれぞれを食べやすい状態まですりつぶします。
最後にボウルで合わせて良く混ぜれば出来上がりですが、
必ず煎り塩を最後に加えて好みの塩加減に調整してください。
風味付けに使うなら塩は少なめの方が使いやすいかもしれません。
煮沸消毒した清潔な瓶に乾燥剤と一緒に入れて保存しましょう。

「デュカ玄米おむすび」のつくりかた

玄米3合に塩小さじ1杯と1/2を入れて炊飯器の玄米モードで炊きます。
水加減は炊飯器の表示に従って。
もちもちの食感がお好みなら圧力鍋でもいいのですが、
おむすびやごく普通のご飯感覚でいただくなら炊飯器が便利です。
後でデュカを混ぜるので塩加減にはご注意を。
気持ち控えめにしておくぐらいでちょうどいいはずです。

炊き上がった玄米に、好みの分量のデュカを入れて、
さっくりとご飯粒をつぶさないよう混ぜ合わせます。
必ず味見をして塩加減を確かめることをお忘れなく。

混ぜ合わせた玄米は小鉢などに入れてから結びましょう。
そのときに量りを使うと大きさを揃えられるので
おむすびを並べたときに見栄えがします。

三角おむすびを上手に結ぶには横の面をいつも意識して。
手で順番にそっと押さえるようにしながら、
角をきちんと出していくと美しい形に整います。
手首を返しながらリズミカルに結んでいきましょう。結んだら海苔を巻いてできあがり。

おむすびのおとも
滋味あふれる優しい甘さの干し野菜スープ

佐藤さんの常備品のひとつが自家製の干し野菜。
からりと晴れて湿気が少ない時期にまとめて大量につくります。
特に3日間ほどかけて完全に水分を抜いた完全干し野菜は、
乾燥剤を入れておけば1年近く持つし、冷凍もできるので、
スープなど汁もの系をつくるときにとても便利。
ぎゅっと凝縮した野菜の甘味とうまみがスープに溶けだして、
なんとも素朴で優しい味わいになるのです。

どんな野菜も細めに切ってカラカラになるまで干すだけと
干し野菜はつくりかたこそとても簡単ですが、
今年のように天候不順だと干しあがるまで気を揉む毎日だとか。
おいしくつくるコツは、新鮮な野菜を使うこと。
干しと枯れは似ているようでまったく違うと、佐藤さん。
食べきれないと思ったらすぐに干すことが大切です。
特においしいのはエノキとレンコンで、
逆にほうれん草のような葉ものやアクの強いものはいまひとつ。
ナスや椎茸、ピーマンのように水分が多い野菜も干しあげるのが難しい。
それだけを頭の中に入れておいて、
完全干し野菜をぜひ天気のいい日につくってみてください。

「完全干し野菜の昆布出しスープ」のつくりかた

完全干し野菜は使う前にザルに入れてよく洗うのがポイント。
どうしても独特のにおいがあるからです。
また昆布はできれば前日の夜から水に浸し
じっくり時間をかけておいしい出しを取りましょう。
鍋にその出しを入れて火にかけ、沸騰直前に昆布を引き上げ
洗って絞っておいた干し野菜を入れます。
3分ほど煮たら日本酒とみりん少々を加え
さらに1分ほど煮て塩で味を調えたらできあがり。
お好みで生姜を加えてもおいしいですよ。

佐藤裕加さん プロフィール

東京都渋谷区出身、鎌倉市在住の料理家・フードコーディネーター。 身体に良い調味料、自家製の保存食を活かしたヘルシー料理を提案。 幼い頃、当時まだ珍しいプロの女性料理人だった祖母の料理に感動したのが食の原点。現在は自立した女性4人で海辺のシェアハウスに住み、昔ながらの食を大切にした暮らしを実践中。
写真・津留崎徹花 文・岡崎弥生