Vol.5 おむすびの話
~自家製和風ピクルス×半干し野菜〜

どこででも手軽に食べられて満足感もたっぷり。
誰もが思わず笑顔になる手づくりのおむすびは、
瑞穂の国に生まれたわたしたちのソウルフードかもしれません。

シンプルな塩むすびのおいしさも格別ですが、
“うまみの魔法”を少々プラスして旬の野菜でつくった“おとも”を添えれば、
おもてなしにも使えるちょっとしたご馳走に早変わり。

農家の方が丹精込めてつくったお米を
できるだけおいしくていねいにひとつに結んであげたい。
そんな思いから生まれた料理家・佐藤裕加さんの、
しみじみとおいしいおむすびをご紹介します。

野菜のうまみをひと手間かけて味わい尽くす。

鎌倉在住の料理家・佐藤裕加さん行きつけの市場は、
約70年の歴史がある「鎌倉市農協連即売所」、通称・レンバイです。
農家の方が毎日交代で朝採れ野菜を販売しているので、
使ったことがない珍しい西洋野菜でも
どう料理すればいいのかや、おいしい食べ方のコツなど、
育てた人から直接アドバイスがもらえるのが人気の秘密。
また、ここは近隣のシェフ御用達の市場でもあるので
サラダにするだけでパッと皿が華やぐカラフルな野菜も多く、
鮮やかな天然色は見ているだけでも心が躍ります。

佐藤さんは、このカラフルなレンバイの野菜を使い、
保存食の地味なイメージを少しでも変えたいと
自分の講座に「彩り干し野菜教室」と名付けていたほど。
見た目にインパクトがあると、やはり生徒さんの反応も全然違い、
保存食とは思えないかわいさと評判だったそうです。
それに実際、干したり、漬けたりというひと手間を体験してもらうと、
野菜本来のうまみや甘味、食感の変化がおもしろいし
これなら飽きずに食べられると気づいてもらえるそうです。

大事なのは野菜を無駄なくおいしく食べること。
使いきれなくて余った野菜を捨てるのではなく
使い切るためにもひと手間かけておいしくする。
昔ながらの生活の知恵はとても合理的なのです。
健やかな野菜を育てるには、どれだけの手間と愛情がかけられているか。
それを佐藤さんはある有機栽培農家さんとの出会いで知り
かつての自分のように、捨てたくないのに食べ切れない人に
干し野菜のような保存食をつくってもらいたいと思っています。

そこで今回はふたつの野菜の保存食を使い、
色鮮やかな「おむすびプレート」に仕上げます。
身近な野菜を使ったカラフルなピクルスと
野菜の甘味やうまみを凝縮した半干し野菜。
どちらも寒くなったいまがつくりどき。
まずはかわいい瓶を用意してピクルスつくりから。
砂糖を入れず、日本酒の自然な甘みと米酢の柔らかな酸味を活かした、
和風ピクルスはおつまみにもぴったりです。

「和風ピクルス」のつくり方

最初にピクルス液をつくります。
水700ccに、米酢100~120cc、日本酒大さじ2、塩小さじ2~3のほか、
ローリエ1枚、粒胡椒20粒、スライスしたニンニク1片分、唐辛子1本を、
すべて鍋に入れて中強火で1分ほど煮たてます。
ポイントは、米酢はなるべくツンとこない柔らかな味わいのものを選ぶことと
野菜から水分が出るので塩気はしょっぱいくらいに加減すること。
味見をしておいしいと思ったら塩が足りない証拠です。
冷ましたピクルス液は煮沸した瓶に入れて
食べやすい大きさに切った野菜を漬けてできあがり。
約半日、常温で置いてから冷蔵庫に入れますが、
これからの時期なら暖房の入っていない部屋に放置しても大丈夫。
中1日たったらそろそろ食べ頃なので必ず味見を。
塩が足らなければ追加しておきましょう。
このピクルス液には野菜の甘味が出ているので、
酢と塩を足して再利用も1回だけなら可能です。

このピクルス液の分量で漬けられる野菜の量は
ミニトマト15~20個、きゅうり2~3本、黄パプリカ1個、人参60g程度。
ゴボウもおいしいのでぜひ別瓶で試してみてください。
ミニトマトは爪楊枝で穴を開けると味がよく染み込みますが、
早めに食べるか、つぶしてドレッシング替わりに。
甘くないので料理の素材としても活用しやすいピクルスです。

「和風ピクルスおむすび」のつくりかた

おむすび用のごはんは塩少々を加えて炊きます。
塩加減はお米3合に塩小さじ1杯と1/2が目安。
みじん切りにした和風ピクルスを、キッチンペーパーに包んでしっかり水気を絞り
ふんわりあえるだけでカラフルなピクルスご飯に。
日本酒と米酢を使ったピクルスなので、
即席酢飯の感覚でこのままでもおいしくいただけます。
おむすびにするときは、米粒と大きさを揃えるつもりで、
ミニトマト以外のピクルスはなるべく細かく刻んでください。

小鉢などに入れて均等に分けたピクルスご飯を
手首のスナップをきかせながら、きれいな三角形に整えていきます。
なかはふんわり、外はしっかりを意識してむすびましょう。

おむすびのおとも
超シンプル&新感覚の半干し野菜のソテー

3日程度は干す必要がある完全干し野菜に比べると、
手軽にトライできるのが半干し野菜。
薄く切って6時間ほど日に当てて水分を軽く飛ばすだけなので、
朝、天気が良さそうと思ったらすぐにつくることができます。
保存袋に入れて冷蔵庫保管で5日中に使い切るのが目安と、
完全干し野菜のように長期保存はできませんが
普通の野菜感覚で調理できるので使いやすいのもポイント。
水分の多いキャベツやピーマン、玉ねぎなども、
完全干しは難しくても、この半干しには向いています。
紫キャベツや黄色や赤色ピーマンを使って、
カラフルな半干し野菜を目指してみましょう。
いまが旬の根菜類のなかでも、特に大根とレンコンはお忘れなく。
独特の甘味と食感、うまみがたまらないおいしさです。

「半干し野菜のソテー」のつくりかた

半干し野菜はさっと水洗いしてから、
つぶしたニンニク、オリーブオイルを入れたフライパンで炒めて
火が通ったら日本酒と塩少々で味付けするだけ。
軽く干すことで水分を飛ばしてあるので味が入りやすく、
干し野菜自体の甘味が濃いので味付けも塩だけで十分。
もちろん肉類と一緒に炒めてもおいしいですが、
できれば、独特の歯ごたえとうまみをシンプルなソテーで味わってみてください。

佐藤裕加さん プロフィール

東京都渋谷区出身、鎌倉市在住の料理家・フードコーディネーター。 身体に良い調味料、自家製の保存食を活かしたヘルシー料理を提案。 幼い頃、当時まだ珍しいプロの女性料理人だった祖母の料理に感動したのが食の原点。現在は自立した女性4人で海辺のシェアハウスに住み、昔ながらの食を大切にした暮らしを実践中。
写真・津留崎徹花 文・岡崎弥生