手羽元さえあれば。
vol.1「鍋のなかで生まれる一体感」
~春のジンジャーポトフ~

食卓に温かいスープがあるだけで、なぜかほっとして、心が和んでしまうもの。さまざまな食材の「うまみ」が溶け込み、まあるくひとつにまとまったスープは、味わい深いだけでなく、癒やし効果も絶大です。お家で簡単につくることができて、スープを身近に感じられるレシピをご紹介します。

ことこと煮込むと、とことんおいしい

疲れたときや、ちょっと食欲がないようなときも、なぜかスープはおいしく食べることができるから不思議です。いろんな材料を鍋に入れてことこと煮込むことで、うまみが増すスープは、慌ただしい日々を送っているような人にこそ、つくってほしいメニューといえます。

簡単だけどおいしいスープのつくり方を教えてくれるのは、フードコーディネーターのwatoさん。管理栄養士の資格を持ち、病院勤務の経験もあるwatoさんは、現在、雑誌やwebなどでレシピを紹介するほか、「wato kitchen」としてケータリングやイベントへの出店も行っています。フードコーディネーターになる前は、スープ好きが高じてスープ専門店で6年間働いていたそうで、スープの魅力に公私ともに(?)惚れ込んでしまった人。ケータリングやイベントでは、あっという間に売り切れてしまうほど人気のスープもあるそうです。

3回にわたって紹介するのは、鶏手羽を使ったスープ。その1回目は旬の野菜をたっぷり味わえる「春のジンジャーポトフ」です。

 

「春のジンジャーポトフ」材料とつくり方

◎材料(4人分)
鶏手羽元 4本(250g)
春キャベツ 1/4個(150g)
ごぼう 1/2本(40g)
新にんじん 1/2本(60g)
新玉ねぎ 1/2個(80g)
しょうが 1片
水 700cc
白ワイン(または酒) 大さじ2
塩 小さじ1~
こしょう 適量
ローリエ 1枚(あれば)
◎つくり方
1.キャベツは3~4cm角のざく切り、ごぼうとにんじんは長めの乱切り、玉ねぎは芯をつけたまま8等分のくし切りに、しょうがはせん切りにする。
2.鍋に鶏手羽元と水を入れて、強火にかける。沸騰してアクが出てきたらすくい取り、中火にする。
3.ごぼう、しょうが、白ワイン、塩を加え、ふたを少しずらして乗せ、30分くらい煮る。水分が減ったらその都度足す。
4.キャベツ、にんじん、玉ねぎを加えて、さらに15分煮る。野菜が柔らかくなったら、塩・こしょうで味を整えて、火を止める。

鶏手羽はご存じの通り、鶏の翼部分の骨付き肉で、うまみたっぷりのスープを手軽に作ることのできる優秀な食材。付け根に近い手羽元と、先端のほうの手羽先に分けられるのですが、ここでは手羽元を使用しています。

 

「おいしいだしを取りたいなら、骨付き肉が一番です。だしを取ることだけを考えるなら、手羽先でもいいと思うのですが、スープの具としても楽しみたいので、手羽先よりも脂肪が少なくて、お肉のたくさんついている手羽元をおすすめします」

鶏手羽のスープは水から煮ることで、骨の髄からうまみを引き出していきます。

「沸騰するまでは強火にしてください。ふきこぼれないように気をつけながら、アクを一気に出してすくい取りましょう。あとは中火にして30分煮込むだけ……簡単すぎますよね(笑)」

ポイントは、アクを取ったら火を弱めること。“ぐつぐつ”ではなく、“ことこと”くらいの火加減だと白濁せず、澄んだ色でまろやかな味にしてくれます。30分くらい煮ればうまみがじゅうぶんに出ますが、1時間以上煮るとより濃厚なスープになって、お肉が簡単に骨から外れるくらいホロホロの柔らかさに。

スープのよさは包容力

ここまでが鶏手羽を使った基本のスープのつくり方ですが、今回はアクを取ったタイミングで、うまみを構成するもうひとつの主役といえる、ごぼうも一緒に煮込んでいきます。

 

「ごぼうは煮る時間が長いほど、ほくほくになっておいしいですし、煮崩れることはまずないので、鶏手羽と一緒に煮ると時間短縮にもなります。ごぼうの下処理は、たわしで軽く皮をこそげる程度に。すぐに使うのであれば、水にさらさなくても大丈夫です。そのほうが、ごぼうの風味を感じることができますよ」

ここでは普通のごぼうを使っていますが、柔らかい新ごぼうでももちろんおいしくできます。しょうがもレシピでは千切りにしていますが、おろしてもOK。にんじん、キャベツ、玉ねぎを投入したら、柔らかくなるまで再びことこと……。

「野菜の切り方ついても、今回は存在感を楽しめるくらいの大きさにしていますが、もっとゴロっとさせてもいいし、ミネストローネのようにサイコロ状に小さく刻んでも。スープはこうやってつくらなければいけないという決まりが少なくて、包容力があるのがいいところ。キャベツだって、さっと煮てシャキシャキと歯ごたえがあるくらいもおいしいし、くたっとするまで煮込むのもおいしくて、甲乙つけがたいですよね(笑)。煮る時間によってスープも表情が変わってくるので、いろいろ試して好みを見つけてください」

 

最後に味見をして、塩、こしょうで整えましょう。

「塩は先に入れたほうが、角が取れて丸くなるので、ごぼうを煮込む時点で小さじ1を加えています。最初は少なめの塩分量にしておいて、お肉や野菜から出るうまみとのバランスを見ながら、最終的に調整してください」

 

鶏手羽と春野菜のうまみがひとつになったポトフは、とっても優しい味わいで、しょうがの風味がアクセントに。お肉とスープどちらも楽しめる鶏手羽の仕事ぶりに、改めて驚きです。

「具材を変えるなら、じゃがいもやセロリなどポトフの定番野菜はもちろんおすすめですし、にんじんを入れずに菜の花やスナップエンドウなど、グリーンの春野菜でまとめると、大人っぽい雰囲気になります。風味をアレンジするなら、しょうがの代わりに、ローズマリーやカレー粉を入れるのもいいですよ」

煮る時間やアレンジ次第で、おいしさがどんどん変わっていくスープの包容力。ぜひその懐の深さを感じてみてください。

写真・ただ(ゆかい)  
文・兵藤育子

wato プロフィール

栄養管理士、フードコーディネーター、イラストレーター。岩手県出身、東京都在中。雑誌、webでのレシピ紹介のほか、「wato kitchen」としてケータリングやイベント出店を行っている。生まれ故郷である岩手県の一関コミュニティFMで『watoのおむすびラヂオ』(毎週金曜19:30~19:55)のパーソナリティーも務める。著書は『リトルギフト』(サンクチュアリ出版)、『春夏秋冬ごはん帖』(ヴィレッジブックス)など。最新刊はスープづくりのコツや、アレンジのヒントが満載の『ことこと、スープ。』(光文社刊)。
ブログ「wato kitchen」 http://blog.watokitchen.com/