一度足を踏み入れてしまったら、あまりの面白さにズブズブとはまり込んでしまうのがご当地雑煮ワールドだ!と私、粕谷は思っています。
だって、ですよ!
みんなが皆、ウチのお雑煮は普通だ、と思っているんですよ。
何人の人に尋ねたのか、もう数えきれないほどですが、
「どんなお雑煮を食べていましたか?」と尋ねると決まって
「ウチのはフツウなんですけどね・・・」という言葉が枕詞のようにくっつくのですよ。
私はその言葉を聞くと、ウフフといつもほくそ笑んでしまい、「えぇえぇ、その普通のお雑煮を是非お聞かせくださいな」と喜んでしまうのです。
そうして聞き出してみたら、こ~んな具合。
なんたるバリエーション!並べるだけで楽しくなってしまうほど実に個性的なのです。
お雑煮ほどユニークな家庭料理はないのではないかしら?と常日頃から思っているんです。
同じ日本語の「お雑煮」という言葉を使いながら、それぞれ頭の中で思い描いているお雑煮像はてんでバラバラ実にバリエーション豊かなのです。
皆それぞれ、「あたりまえ」「普通」と思っているお雑煮が、ふとヨソの人と会話を始めてみたら、「ウチのは白味噌に八つ頭が入ってる」「え?すまし汁に鶏肉、ユズを添えるもんでしょ」「ウチは鮭といくらだよ」「出世魚のブリでしょ、もちろん!」・・・そんな具合で、皆が異なるお雑煮を食べていたりして大いに盛り上がっちゃうのです。
お雑煮という料理は、正月というとびっきりのハレの日に食べる家庭料理。年に一回の家庭の行事食だからこそ、情報化社会の今も地域の食文化が緩やかに継承されている、実はとても稀有な料理なんですよね。
雑煮の発祥は公家のハレの日の食からと言われています。それを室町時代には武家が真似をし、饗応料理として宴席で提供されたとも。今のように全国的に庶民に広まったのは江戸時代。年貢によって、全国的に稲作が行われるようになり、正月には年神さまにお供えした餅のご利益をちょうだいする「神人共食」として、一年の豊作や子孫繁栄を願って食べるようになったのが今の雑煮、と言われています。
お雑煮の具材や出汁等を見てみると、各地域で大切にしている価値観や食風習なども垣間見えてこれまた実に面白い!
例えば、名古屋など東海地域のお雑煮は実にシンプル。澄まし汁に煮た切り餅、地域野菜の餅菜だけ。そこにかつおぶしが添えられているだけの潔さです。
しかし、この雑煮にも背景のモノガタリ・理由があります。白い切餅は、「城」を意味し、城は焼いてはならぬ、で煮る。名をあげる、と掛けて菜(な)をまず食する。そして、ミソをつけてはならぬ、と赤味噌文化圏にもかかわらず雑煮には澄まし汁。何とも武士文化ちっくな縁起掛け。
一方、京都など関西地域では、白味噌仕立てで、サトイモや金時人参、雑煮大根などはすべて丸く切る。家族円満、物事を丸くおさめる、を掛けているから四角くは切らないのです。
東北地方では、切り方も異なる。短冊切りや千切りが多い。仙台などでは、大根、人参、ごぼうを一度ゆでて、戸外に出して凍らせる。凍み野菜にしてしまうのです。これを「引き菜」と呼んでいます。一人分ずつ小分けに凍らせると、実に便利に効率的に三が日のお雑煮に使えちゃいますよね。
仙台では、焼きはぜの出汁で引き菜や凍み豆腐、鶏肉など実に具沢山。正月を迎える華やかな気持ちが雑煮の椀に表現されているようです。
ちなみに私の生まれは香川県だが、香川の善通寺市では、イリコだしの白味噌仕立てで、サトイモ金時人参、大根が入り、餅は甘~いあんこが入ったあん餅である。アオサの磯の香りを添えたこのひと椀が実に絶妙なバランスで旨い。かつて、和三盆の産地で知られる香川県だが庶民には砂糖は贅沢品でなかなか口に出来ない。でもせめて正月だけは甘いものを食べたい、と餅にあんこを隠して食べた、という何とも人間くさい逸話もある。
ご当地雑煮、実に多彩なローカル食文化が背景にあって面白いでしょう?
あぁ語り足りない!もっともっと楽しいお話が一杯あるのですよ、た~んと!
私自身もまだまだたくさんのお雑煮話を知りたくて、もっともっとと尽きぬ興味に突き動かされつつ、「お雑煮教えてく~ださ~いなっ!」とおばあちゃんナンパを繰り返しているのです。
ご当地雑煮トークと4種類のご当地雑煮食べ比べを楽しめる「お腹いっぱいになれるお雑煮エンタメ劇場」です。ワインとお雑煮のマリアージュや、「お雑煮を連れ出そう」アソビなど新しいお雑煮体験ができます。是非いらしてくださいね!
●日時:12月17日(月) 18:30~20:30
●会場:東急プラザ銀座 ハンズエキスポカフェ
詳細・お申し込みはコチラから → https://ozouni2018.peatix.com/
1972年香川生まれ。
転勤族の家庭で育ち、様々な地域の雑煮を幼少期から知る。
37歳の時に、女子栄養大学短期大学部に社会人入学し、その時に徹底的に雑煮調査を始める。
品川区立武蔵小山創業支援センターのセンター長職などを経て、2015年に株式会社お雑煮やさんを立ち上げ、どっぷりお雑煮まみれの生活に身を投じる。