ニッポンふるさとごはん帖
vol.1 漬物ステーキ ~岐阜県美濃加茂市~

料理家、写真家として全国を飛び回り、各地に根ざした食材や料理を食べてきたminokamoさんの、ごはん旅日記。
幼い頃の食の記憶、旅で出会った珍ごはんや地元の方々の触れ合いなど食の思い出を綴ります。

 

岐阜県美濃加茂市出身のminokamoです。連載第一回目なので自己紹介をいたしますね。

各地域の食材を活かして、お料理の提案や企画をしています。
子供の頃、岐阜県七宗町の農家だった祖母が大好きで週末や夏休み、いつも通っていました。お盆や正月、祖母の家で、親戚みんなで食べるご飯はなんて美味しいこと!食器の片付けだって、おばちゃん達と話をしながらするのは楽しい。いま思い返すと各世代が集まって、知恵も元気もわけあっていたんだな!と思います。畑では祖母が作るもぎたてとうもろこしの甘さや、トマトの味がとても濃かったことをよく覚えています。スイカも冷蔵庫でなく井戸水で冷やしていただいたり、豆腐やこんにゃくを一緒に作ってみたり。今でもその経験が「美味しい基準」になっています。
そんな経験から、みなさんも楽しくご飯を食べる機会が増えたらと今の活動につながっています。そして、祖母からもっと郷土料理を聞いておけばよかった!と思い、今元気な各地のお母さんたちに郷土料理をお尋ねして、その知恵もみなさんにおすそ分けできたらと、郷土食のご紹介の活動もしています。

さて、今回は故郷で子供の頃食べた郷土食のお話を。

小学生の時、おとなりの佐々木さんが裏の塀越しに時々差し入れをしてくれることがありました。作ったおかずのおすそ分けを塀越しに・・・とはなんとも昭和らしいご近所付き合いですね!

とある夕暮れ時にいただいたものが「白菜の漬物を炒めたもの」でした。
なんでも、古くなった白菜を炒めて鰹節をかけたものとか。
子供の私には「うーん、古い漬物!?」
地味な色合いで白菜もくったりしていて不安な一皿(佐々木さん、ごめんなさい!)おそるおそる食べたのでした。
すると、予想外に美味しい!見た目とは違い思わぬご馳走。酸味が炒めることでコクがある美味しい一品になっていました。

その数年後、飛騨地方の名物として「漬物ステーキ」という名前で居酒屋やお土産屋でも見かけるようになり、佐々木さんが作ってくれたのは、これだったんだと知ったのでした。

冬に雪が積もる飛騨地方では、凍った漬物を朴葉にのせて囲炉裏で焼いて温かい料理にしたり、発酵がすすんで酸っぱくなった白菜を炒めて美味しく食べてきたようです。酸味がすすんだ白菜も手作りの漬物ならでは。

お店では仕上げに生たまごをのせたり、卵と炒めたり、醤油で味付けし出しているところもあります。みなさんも、浅漬を油で炒めて仕上げに鰹節をかけ、お好みで卵をつけたり七味をかけて、日常の食卓で漬物ステーキを楽しんでみてくださいね!

minokamo (長尾明子) プロフィール

岐阜県美濃加茂市出身。料理家、写真家。「ごはんで町を元気に!」をテーマに、各地でその土地に根差したメニュー開発、キッチンプロダクトのフードコーディネート、雑誌へのメニュー提案ほか、各世代がつながるイベントも開催。味噌料理も得意とする。各地の郷土食を取材し、紹介する活動も行っている。