vol.9 土佐煮の話
「うまみを含ませる、炊くという調理法」~たけのこの土佐煮~

稲作が日本に伝わって三千年。お米は日本人の主食として長い間食べられてきました。そして、ごはんを引き立てるために生まれた素材の持ち味を活かしたおかずや汁物。このコラムでは、ごはんと一緒にいただきたい「うまみ」ある一品をご紹介します。

合わせだしは、和食の基本だけれども

うまみは単体でもおいしいですが、異なるうまみ成分をあわせると相乗効果でさらにおいしくなります。かつお節に多く含まれるイノシン酸と昆布に多く含まれるグルタミン酸の組み合わせは、その最たるもの。このふたつを使ってつくるの合わせだしは、和食の基本ですね。

合わせだしの材料は、水1リットルに対して、昆布10gとかつお節20g。鍋に水と昆布を入れ1時間ほど置き、昆布のうまみを引き出します。昆布を入れた鍋を弱火にかけ、鍋底から小さな気泡が出てきたら火を止め、沸騰直前に昆布を引き上げます。再度点火し、弱火でかつお節を入れうまみを引き出したら火を止めます。かつお節を鍋底に沈むまで待ち、ガーゼなどを使って濾してできあがりです。

合わせだしを使うと、かつお節と昆布のうまみを十分に味わうことができますが、合わせだしでなくても、その相乗効果を感じられる料理は数多くあります。

春の訪れを告げる、たけのこ

今回ご紹介するのは、もうすぐ旬を迎える春の食材、たけのこを使った土佐煮です。

現在販売されているたけのこの多くは、孟宗竹(もうそうちく)という種類のもの。竹の地下茎から伸びた若芽の部分にあたります。あっという間に伸びてしまうたけのこの旬は、本当に一瞬。たけのこが店頭に並び始めると春の訪れを感じます。

収穫されたたけのこは時間が経つとえぐみが増すので、できるだけ早めに下ゆでをするのがポイントです。アクを抜きやすく、水周りをよくするための切り込みを入れたたけのこを大きな鍋にいれ、米ぬかと赤唐辛子をいっしょに入れてゆでると、えぐみが抜けておいしく仕上がります。煮汁が吹きこぼれない程度に、鍋肌がグツグツ沸いている状態にして2時間。たけのこをゆでている間は、水が蒸発して減りすぎないように適宜水を足しましょう。ゆで上がったら、たけのこをすぐに鍋から出すのではなく、鍋ごとゆで汁に浸かった状態で冷まします。

新鮮なたけのこは香りや歯ざわりが抜群ですが、最近ではあらかじめゆでられた水煮のたけのこが手軽に買えるようになったので、今回はそちらを使います。

うまみを吸わせる、からませる

「たけのこの土佐煮」材料とつくり方

◎材料
たけのこ(水煮) 150g
昆布 3cm
かつお節 5g
(合わせ調味料)
└ しょうゆ 大さじ1
└ みりん 小さじ2
◎つくりかた
1.たけのこを食べやすい大きさに切り分け、さっと下茹でして水気をきる。
2.鍋に300ml(分量外)の水と昆布を入れる。
3.鍋に切り分けたたけのこを入れ、火にかける。
4.煮立ったら、合わせ調味料を加え、10分ほど弱火で煮る。
5.かつお節を加え、さっと混ぜ合わせて火を止める。

鍋に昆布を入れてうまみを引き出します。もし、昆布水があるようであれば、そちらを使ってみてもよいでしょう。

昆布水とは、麦茶用のポットに1リットルの水と昆布10gを入れて冷蔵庫で一晩置いたものです。昆布水があれば、合わせだしをつくるのも簡単になりますし、もちろん昆布水単体でもさまざまな料理に使えます。「1リットルもまとめて作ってしまって使いきれるかな?」と不安になってしまいますが、意外にあっという間に使い切ってしまいますよ。

大事なのは分量をケチらないこと。昆布をたっぷり使えば、その分うまみをはっきりと感じ取ることができます。味が薄いなと思ったら昆布の量を増やしてみたり、昆布をつけておく時間を長くしたりしてみてください。

さっと下茹でしたたけのこを入れて火にかけます。たけのこに含まれるうまみ成分で多いのは、アスパラギン酸やグルタミン酸。昆布に含まれるうまみ成分の多くはグルタミン酸。たけのこと昆布は、同じうまみ成分を持つ相性のよい食材です。

たけのこは穂先と根本では固さが違いますので、柔らかい穂先は厚めに、根本は薄めに切り分けると口に入れたときの歯ごたえが揃います。

合わせ調味料のしょうゆとみりんを加えると、よい香りが漂ってきました。食欲がわいてきますね。火を加えながら、昆布、しょうゆ、みりんのうまみを筍に含ませていきます。落し蓋をすると、味の染み込みがさらによくなります。

ここでかつお節の出番です。ひとつかみの花かつおを豪快に鍋に入れ、ひと混ぜして火を止め、できあがりです。温かいうちに食べてももちろんおいしいですが、少し冷めると味がよく染み込むので、火からおろしたらしばらく置いてもよいでしょう。

合わせだしを使わなくとも、かつお節と昆布のうまみが出会いました。

弱めの火でゆっくり時間をかけて煮ることで素材の中まで煮汁を吸い込ませる調理法を「炊く」といいますが、かつお節と昆布でさっと炊くと短時間でもおいしい煮物をつくることができます。たけのこ以外でもおいしいので、これから旬を迎える春の野菜でぜひお試しください。

ごはん同盟 プロフィール

試作係(調理担当)のしらいのりこ、試食係(企画・執筆担当)のシライジュンイチ、夫婦ふたりによる炊飯系フードユニット。「おかわりは世界を救う」の理念のもと、日夜ごはんを美味しく味わう方法を生み出し、発信を続ける。お米やごはんに関するワークショップや料理教室を開催するほか、雑誌などを中心に様々なメディアにてごはんレシピを発表。著書『忙しい朝でもすぐできる ごはん同盟のほぼごはん弁当』(家の光協会刊)が好評発売中。
http://gohandoumei.com