恵みのくにへ。
vol.8 太陽と水の恵みを探しに信州佐久へ・後編

野菜作りや農業で繋がる「縁」を大切にした農縁プロジェクトをはじめ、テレビやラジオで活躍中の川瀬良子さんが、豊かな食や暮らしが息づく地「恵みのくに」を訪れ、人や食との出会い、さまざま発見をレポートします。

 

こんにちは。川瀬良子です。

高い晴天率を誇り、八ヶ岳の伏流水に恵まれた長野県佐久市の“恵み”探しは、まだまだ続いています。

後編は、佐久の浅科地区から。
一面田んぼ!稲穂が実っていてすごくきれいな景色が広がります。
この地域一帯で作られるお米は、特に味が良く「五郎兵衛米」というブランド名で流通しているそうですよ。


稲刈り間近の田んぼ。案山子は、2歳の娘さんと一緒に手作りしたもの。

 

今回は、「がんも農場」さんの田んぼにおじゃましました。
迎えてくださったのは、がんも農場を営む、黒田祐樹さんと、奥様のさきこさん。
黒田さんは、埼玉県出身。料理人などの仕事を経て、2010年に佐久へ移住し、米作りを始めたそうです。

黒田さんが育てている品種はコシヒカリ。甘みと粘り気があって、冷めても美味しいのが特徴だそうです。

「ここは、地力が高いんです。土壌は養分をたくさん含んだ粘土質で、蓼科からの水にもミネラルが含まれているので、おいしいお米が作れるんですよ」と黒田さん。

しかもここは標高700m。
大きな寒暖差によって、稲穂が甘みを蓄えるだけでなく、晴天の日が多く湿気が少ない、風もよく吹き抜けるので、稲が病気になりづらいのだそうです。

佐久市の晴天率の高さ、蓼科のミネラルたっぷりの清らかな水は、お米を作るうえでも好条件なんですね。

「水は選べないですからね。有難いです。」と、黒田さん。


お客様に送付する「がんも農場通信」。稲の様子や、家族の様子を綴ったレターからは、黒田さんの人柄が伺えます。

 

この地でお米を作り始めて10年。試行錯誤を繰り返しながら、おいしいお米作りを追求してきた黒田さん。
今ではお客様も増えて、作ったお米すべてが売れるまでに。

黒田さんに、これから田んぼの規模を大きくしていくのですか?と尋ねると、
「夫婦二人で最大限のパフォーマンスを出せるのが、いまの規模なんです。自分たちの気持ちを、ダイレクトにお客様に伝えることができますから」

「“がんも農場のお米”が欲しい、と言って下さるお客様に届けたいですね」と、さきこさん。

おいしいお米を届けたい。
シンプルな中に、たくさんの思いが詰まったがんも農場さんのお米。
今年の新米、もうすぐですね~!きっとおいしいんだろうな~♪
黒田さん、さきこさん。ありがとうございました!

次は、美しい里山に囲まれた内山地区へ。
ここでさまざまな野菜を育てる「つながり自然農園」の磯村 聡さんにお話を伺いました。

磯村さんは、もともと日光国立公園のネイチャーガイドとして活動していましたが、後継者のいない、おじいさんの畑を継ぐことを決意し、2013年に佐久に移住してきたそうです。

そんな磯村さんが取り組むのが「炭素循環農法」。
これは、土にもみ殻やおがくず、キノコの菌床など微生物のえさとなるものを混ぜることで、多様な微生物を増やす自然にやさしい持続可能な農法で、土の中では、微生物と植物が生きるのに必要な栄養分を互いに渡し・支え合う関係ができるのだそうです。

「僕の役割は、野菜を育てるのではなく土の中の微生物を“お世話する”ことです。あとは、自然の力がおしいい野菜を育ててくれますから」と磯村さん。

早速、磯村さんのスイートコーン畑を見学します。

トウモロコシをポキッ!と収穫させていただいて皮をむいてみると、白と黄色の綺麗な粒がぎっしり。
ピカピカつるつる!粒に自分の姿が映っているからびっくり!
採れたてをガブリと食べてみると…食感はシャッキシャキ!あまぁぁぁい!
でもスッキリした甘みです。口の中で1粒1粒が弾けて、トウモロコシジュースのようになります。
このとうもろこしの品種名は“しあわせコーン”と言うそうなのですが、確かに、このおいしさはハッピーになります(笑)
夢中で1本食べてしまいました。

こちらも、炭素循環農法で育ったミニトマト、「ラブリーさくら」。
「水はあげていません。だから、甘みが濃厚ですよ」

食べさせていただくと、知っているトマトと全然違う!
肉厚でプリっとした食感、まったく酸味がなくて、とにかく甘い!まるで新たなフルーツに出会ったみたいです!
トウモロコシもトマトも、衝撃的な甘さでした!

磯村さんは、田植えや稲刈り、生きものの観察や川遊びなどの体験イベントを開催するなどして、作り手とお客様をつなぐ活動も積極的に行っているそうです。

「つながり自然農園の“つながり”には、人の農、人と自然、人と人をつなげる、という想いを込めました」と、磯村さん。
「自分も地域の人、お客様とのつながりを持たせてもらっています。野菜を通じて、これからもいろいろな出会いにつながればと思っています」

私も磯村さんと同じような思いをもって、農縁プロジェクトを立ち上げたので、このお気持ちにすごく共感ができました。

野菜を通じて、私も磯村さんと“つながる”ことができたことに感謝です。
磯村さん、ありがとうございました。


美しい山々に囲まれた農園。吹き抜ける風が気持ちいい~

 

そして、最後に訪れたのが、同じ内山地区にある「うちやまコミュニティ農園」さんです。

「あれ?な~んにもない…?!」

ここで私たちを待っていてくれていたのが、この農園を運営する江原政文さんです。
なんと!畑にPCを持ち込んで、仕事をしていらっしゃいました(笑)。
ひゃ~最高ですね!


時々、畑で仕事をするという江原さん。気分転換にもなって仕事がはかどるのだとか。

 

「ここは、今年6月にオープンしたばかりなんです。参加者ごとの区画を設けず、みんなで耕して、農作物を作る農園です」と、江原さん。

普通、コミュニティ農園といえば、区画を割り当てられて、参加者が思い思いの作物を作るようになっているのですが、こちらは違います。

「暮らしの中に農を入れていきたいんです。でも農をやりたくても、忙しかったり、知識や技術がなかったりと不安な方も多いですよね。だったら、みんなで一緒にやろう、と思ったんです」と語る江原さんも、農業は初心者なのだとか。

江原さんは、佐久市内でコワーキングスペースを運営しているそうですが、こうした協働スタイルを「畑」に取り入れてみたそう。

「お互い様の精神、それぞれのペースを大切にして、参加者の皆さんにとって心地の良い“もう一つの居場所”になればいいと思っています」


農園の一角に植えられた大豆。これから収穫を迎える秋野菜も植えられていました。

 

現在は、15人程のメンバーが集い、一緒に運営する「つながり自然農園」の磯村さんに指導をしてもらいながら、数年間休耕地だった土地を少しずつ手入れをして、農園の形を整えていっているそうです。
先日も、コミュニティ農園を会場に、知人が畑に棲む生き物を探すイベントを開催してくれたりと、少しずつ子どもから大人まで楽しめる「コミュニティ」農園になっていっているそうです。

「僕たちがここに集まるようになって、近所の方々も気になるのか、顔を出してくれるようになったんです」

まだ始まったばかりですが、理想のカタチは?と、お尋ねすると
「理想は、ふらっと寄った時に、誰かが来ていて農作業している、という日常にしたいですね。地域のおじいちゃんおばあちゃん達も参加してくれるといいですね」

一昔前は当たり前だったかも知れない光景を、今また復活させようとしている江原さん。
パソコンとWi-Fiを持ち込むなど(笑)、それぞれの人の暮らし方にあった現代スタイルの農園ができそうですね。
うちやまコニュニティ農園さんのこれからが、とても楽しみです!
江原さん、ありがとうございました。

今回の佐久めぐりで、印象的だったのは、お会いした皆さんが「この素晴らしい里山の風景を残したい」という強い想いを持っているということ。
そして、その想いが、人と人を結びつけていることがわかりました。

美しい景色、清らかな水などは、守る人たちがいてくださるからこそ保たれているんだな。と、気付くこともできました。

黒田さん、磯村さんたちのように、移住する方が多いことも納得ができます。
アクセスの良さだけではない、大切にしたいものがたくさん佐久にはあるんですよね。

太陽と美しい水がもたらす食が豊かな佐久。人と人のながりの中に“恵みのくに”がありました。
地域の皆さんが同じ思いでいられるって、素敵なことですね~!

取材にご協力していただいた皆さん。ありがとうございました!

川瀬良子 プロフィール

静岡県静岡市出身。
タレント、ラジオパーソナリティ。
16歳でモデルデビュー。2010年 NHK 「やさいの時間」の出演をきっかけに、野菜作りや農業への興味が深まり、農業の活性化や農家と消費者を繋ぐ「農縁プロジェクト」を立ち上げる。現在、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」TFM&JFN「あぐりすむ」「あぐりずむ WEEKEND」「暮らしのいきものずかん」などのパーソナリティとしても活躍。自身のプランター栽培での"つまずき"を元にした書籍「川瀬良子のプランター野菜」発売中。