手羽元さえあれば。
vol.2「アジアの気分を自宅で味わう」
~桜えび入りエスニックスープ~

食卓に温かいスープがあるだけで、なぜかほっとして、心が和んでしまうもの。さまざまな食材の「うまみ」が溶け込み、まあるくひとつにまとまったスープは、味わい深いだけでなく、癒やし効果も絶大です。お家で簡単につくることができて、スープを身近に感じられるレシピをご紹介します。

アレンジ自在の鶏手羽スープ。きょうはエスニック気分で

フードコーディネーターのwatoさんが、鶏手羽を使ったうまみたっぷりのスープレシピを紹介する連載2回目は、さっぱりとした味わいがくせになる「桜えび入りエスニックスープ」。

暑くなってくるとなぜか無性に食べたくなる、エスニック料理。独特かつ複雑な味わいを自宅で再現するのは難しそうですが、鶏手羽のスープとナンプラー、あとはちょっとした食材の組み合わせで、あっという間にアジアの味ができてしまうのです。

「桜えび入りエスニックスープ」材料とつくり方

◎材料(4人分)
鶏手羽元 4本(250g)
もやし 1/2パック(100g)
水煮たけのこ 60g
いんげん 6本(25g)
パクチー 適量
レモン 適量
桜えび 適量
水 700cc
白ワイン(または酒) 大さじ2
塩 適量
白こしょう 適量
ナンプラー 大さじ1.5~2
◎つくり方
1.もやしはさっと洗う。水煮たけのこは薄いくし切りに、いんげんは3cmの長さに切る。パクチーはざく切りに、レモンはくし切りに、桜えびはフライパンでから煎りしておく。
2.鍋に鶏手羽元と水を入れて、強火にかける。沸騰してアクが出てきたらすくい取り、中火にする。
3.白ワイン、塩、白こしょうを加え、ふたを少しずらして乗せ、30分くらい煮る。水分が減ったらその都度足す。
4.もやし、たけのこ、いんげん、ナンプラーを加えて、さらに5分煮る。
5.器に盛って、パクチーと桜えびを乗せる。レモンをしぼっていただく。

それでは前回のおさらいも兼ねて、鶏手羽のスープを作るところから始めましょう。手羽元はうまみをしっかり引き出したいので水から煮て、沸騰するまで強火にします。

 

アクが出てきたら、ふきこぼれに気をつけながらレードルやおたまなどですくい取ってください。アクは食品に含まれている渋味やえぐ味、臭味などのもととなる成分。これを取り除くことでスープから雑味が消え、すっきりした味わいになるだけでなく、にごりの原因でもあるので見栄えもよくなります。

「細かいアクが気になるようなら、網杓子を使うとよいでしょう。といってもお家のスープなので、頑張りすぎなくても大丈夫」

アクを取ったら中火にして、30分ほどことこと煮込みます。時間があるときは1時間以上煮るとより濃厚なスープになって、お肉が骨からホロッとはずれるほどの柔らかさに。ところで、おいしいだしを取るなら骨付き肉が一番という話が前回ありましたが、骨付き肉と骨なし肉はどんなふうに使い分ければいいのでしょう。

「私の場合、骨なしの鶏もも肉などをスープに使うときは、野菜をじゅうぶんに煮てから、お肉は最後に入れてさっと火を通すくらいで仕上げることが多いです。そうすると野菜から出たスープのうまみと、お肉そのもののおいしさの両方を味わうことができるので。骨付き肉はその点、じっくりことこと煮るだけで骨からたっぷりうまみが出て、お肉も楽しめるスグレモノです」

エスニックのうまみの秘密

 

エスニックな味をつくる決め手となるのが、ナンプラー。いまやすっかりおなじみの調味料と言えますが、その反面、使いこなしたり、使い切ったりするのがちょっと難しいと感じている人も少なくないかもしれません。ナンプラーはタイの魚醤で、和食における醤油と同じくらい、タイ料理に欠かせない存在。カタクチイワシなどの小魚を塩で漬け込み、発酵させてできる液体なのですが、魚のうまみが凝縮された独特の風味が特徴といえます。とても個性が強いので、ナンプラーを入れるだけでエスニックの味になるという、便利な調味料でもあります。

「最近作っておいしかったのが、醤油の代わりにナンプラーを使ったおからの炒り煮。アサリのむき身を具にしたのですが、魚醤だからかアサリとナンプラーはとても相性がよかったですね。ほかにはナンプラーとごま油、レモン汁に、刻んだパクチーあるいは青ネギを入れたタレにも一時期ハマっていました。冷奴にかけたり、春雨サラダにしたり、いろんな楽しみ方ができますよ」

鶏手羽のスープができあがったら、あとは簡単。今回使う野菜は火の通りが早いものばかりなので、煮る時間はたったの5分ほど。野菜と一緒に投入するナンプラーの分量は大さじ1.5~2としていますが、メーカーによって塩辛さが違ったりするので、最初は半分ほど入れて味見をしてみるとよいでしょう。

風味をプラスしたり味のアクセントになるトッピングも、大事なポイント。そのひとつが桜えびです。

 

「桜えびはフライパンでから煎りすると、サクッと食感がよくなり香ばしさもアップします。パクチーが好きな人は上に乗せるだけでなく、きれいに洗った根っこをほかの野菜と一緒に入れて煮ると、いいだしが出ますよ。辛いのがお好みなら、種を取った赤唐辛子2分の1本を一緒に煮ると、よりエスニックらしいスパイシーな味わいになります」

エスニック料理は辛味、酸味、塩味、甘味などのバランスのよさが特徴といえますが、できあがったこちらのスープも鶏手羽のうまみをベースに、さまざまな味や食感が一体になったさわやかなおいしさ。

「スープを作っていると鍋の中のメンバー、つまり具材が仲良くなったと思える瞬間があるんです。途中で味見をしながら、まだ団結力が足りないなとか、そろそろいい感じにまとまってきたな、などとその瞬間を見極めてみてください」

レシピを参考に自分の好きな味を見つけて、これから来る夏をエスニックスープで乗り切りましょう!

写真・ただ(ゆかい)
文・兵藤育子

wato プロフィール

管理栄養士、フードコーディネーター、イラストレーター。岩手県出身、東京都在中。雑誌、webでのレシピ紹介のほか、「wato kitchen」としてケータリングやイベント出店を行っている。生まれ故郷である岩手県の一関コミュニティFMで『watoのおむすびラヂオ』(毎週金曜19:30~19:55)のパーソナリティーも務める。著書は『リトルギフト』(サンクチュアリ出版)、『春夏秋冬ごはん帖』(ヴィレッジブックス)など。最新刊はスープづくりのコツや、アレンジのヒントが満載の『ことこと、スープ。』(光文社)。
ブログ「wato kitchen」 http://blog.watokitchen.com/