稲作が日本に伝わって三千年。お米は日本人の主食として長い間食べられてきました。そして、ごはんを引き立てるために生まれた素材の持ち味を活かしたおかずや汁物。このコラムでは、ごはんと一緒にいただきたい「うまみ」ある一品をご紹介します。

ごはんにぴったりな、からあげとは?

突然ですが、からあげが大好きです。「もう一個、あともう一個」とついつい食べてしまうので、自宅で食べるときはちょっと多めに鶏肉を用意します。それでも完食してしまうのですけれど。好きなものを好きなだけいただけるのは至福の喜び。揚げ物こそ自宅でつくるのが断然おすすめです。

肉の部位や衣の違いによって作り方はさまざまですが、我が家の食卓によく登場するのは、衣はあまりつけ過ぎない、柔らかくてジューシーなしょうゆ味のからあげ。もちろん、ごはんとの相性を考えての選択です。

柔らかくてジューシーなからあげとごはんを一緒に口に運ぶと、鶏肉のうまみとお米の甘みが混じりあってなんとも幸せな気分になります。もちろん、カリカリ衣のからあげもおいしいのですが、ごはんとの相性を考えるとやわらか衣のからあげに軍配があがります。

からあげのおいしさは下味の付け方でも大きく変わります。にんにくやしょうがなどを使って風味を効かせてもよいですが、最終的に行き着いたのはしょうゆ味でした。これもごはんとの相性を突き詰めた結果。風味をビシっと効かせたからあげは、どちらかといえばおつまみ向きかもしれません。こちらはぜひビールとあわせましょう。

ごはん同盟のからあげはシンプルな味付けですが、さらにおいしくいただくために、もう一手間加えています。それは衣を付ける前に、肉を甘酒に漬け込んでおくことです。

肉を柔らかくする甘酒の効果

甘酒は、米と米麹と水を発酵させてつくるノンアルコール飲料のこと。米麹が分泌する酵素のアミラーゼは米のでんぷんをブドウ糖に、プロテアーゼはたんぱく質をうまみ成分であるアミノ酸に分解します。このような人間に必要な栄養素を多く含んでいるため、甘酒は「飲む点滴」とも言われています。

そんな甘酒は、飲むだけではなく調味料として使っても良い仕事をしてくれます。ブドウ糖やアミノ酸が豊富な甘酒は、砂糖などを足さなくても自然な甘みやうまみを加えてくれるので料理の味に奥行きが生まれ、いっそうおいしくなります。

さらに、たんぱく質を分解する甘酒のプロテアーゼは肉の繊維をほぐしてくれるので、鶏肉が柔らかくなる効果があります。柔らかくてジューシーでからあげをつくるのにはぴったりの調味料ですね。

甘酒のほかにも塩麹や醤油麹など麹を使った漬け床を使って料理をすることが多いので、我が家では自家製の甘酒を使っています。甘酒は発酵時間が4~6時間と比較的短く、炊飯器やヨーグルトメーカー、スープマグなど、温度を一定に保てるものがあれば簡単につくることができます。

最近はさまざまな食品メーカーから甘酒が数多く発売されているので、調味料として使うのであれば、まずはボトルタイプのもので試してみるのがおすすめです。栄養価たっぷりの甘酒ですから、余った分はそのまま飲んでOKです。

甘酒と米粉でつくる、おかずになるからあげ

「甘酒からあげ」材料とつくり方

◎材料
鶏もも肉 1枚(250g)
甘酒 大さじ1
しょうゆ 小さじ1
塩 小さじ1
こしょう 少々
米粉 大さじ2
水 大さじ1
◎つくり方
1.鶏もも肉は余分な脂をおとし、一口大に切り分ける。
2.甘酒をもみこみ、1時間以上おく。
3.塩、こしょう、しょうゆ、米粉、水と混ぜ合わせる。
4.170度の低温の油で2分揚げて取り出す。4分休ませ、180度の中温で1分揚げる。

ジューシーな仕上がりにしたいので、使う部位は鶏もも肉。余分な脂やスジは取り除いておきます。この作業をしておくと食感がよくなるのでなるべく丁寧に。肉は加熱すると縮んでしまうので、やや大きめの一口大に切り分けるのがジューシーに揚げるコツです。

鶏肉を甘酒に漬ける時間は1時間以上がおすすめです。漬ける時間が短くてもだめですが、長く漬けすぎると肉が柔らかくなりすぎて、歯ごたえが無くなってしまいます。下味は、しょうゆと塩・こしょう。肉の表面についた甘酒は拭き取らずにそのまま混ぜ込みます。

衣に使う粉は米粉です。米粉にはグルテンが入っていないので粘りが少なく、衣を付ける時にダマになりません。小麦粉を比べて吸油率が低いのも特徴。カリッと揚がり、冷めてからもサクサク感が長く続きます。

揚げは2度揚げ。1回目は170度の低温でじっくり火を入れ、2回目は180度の中音に温度を上げてカリッと仕上げます。一度にまとめて揚げると鍋の温度が下がってしまうので、量が多い場合は数回に分けて揚げるのがコツ。甘酒としょうゆで下味を付けているので焦げやすくもなります。肉の色の変化に注意しながら揚げてみてください。揚げ終わったからあげはキッチンペーパーで余分な油を吸わせると、衣がふにゃっとなりません。

甘酒と米粉を使ったしょうゆ味のからあげ、いかがでしょうか? どちらも米由来の食材ですから、ごはんとの相性は抜群。まさに「ごはんと一緒に食べるためのからあげ」といってもよいでしょう。

今回ご紹介したからあげはシンプルな味付けですが、肉の選び方、下味の付け方、揚げの温度や時間によって、からあげの味わいは無限に変化します。いろいろと試しながら作れるのが家庭料理のよいところ。ぜひ、あなた好みのからあげを作ってみてください。