umamiのおべんきょうprojectの連載は、
農家さんや料理家さんなど食の現場に関わる方々から
“おべんきょう”になるお話しをうかがいます。

この連載は、umamiのおべんきょうprojectが注目している、野菜若手農家のキレドさんが担当します。キレドさんは千葉で150種もの野菜を育てている野菜農家さんで、今回は自己紹介がてら、umamiのおべんきょうprojectを主催している“やまや”の『うまだし』を使った、簡単でおいしいレシピも紹介してくれました。
photo by Shuhei Yoshida

vol.5 大根のお話

肌寒かった10月から11月に入った途端、昼間はポカポカ陽気が続いていますね。10月下旬から11月初旬はそらまめやエンドウなどの春に食べる野菜の種まきシーズンです。この陽気のお陰で無事に発芽してくれそうです。この時期が寒すぎると発芽に影響が出てきますので週間予報には注意が必要です。

このポカポカを抜けたら一気に冬になっていきます。気温が下がり冬になっていくにつれて野菜たちはおいしくなっていきます。今回はその中でも代表的な野菜「大根」のお話です。

収穫した大根

皮をむくのかむかないのか

みなさんは大根をどう食べますか?これからの季節はみぞれ鍋なんかもいいですね。大根おろしを作るときはどうやって調理しますか?まず皮をむきますか?むいてからおろしますか?どうでしょうか?

なぜ皮をむくのか。そこに自分なりの理由を持っていることが大切です。

手でもむける大根の皮

よく見ると美しい

大根は皮目に辛味があります。いい大根は辛いのは皮目だけ。中は非常に甘いのが特徴です。そのため、皮をむいてからおろすと甘い大根おろしになります。皮をむかずにおろすと辛い大根おろしになります。

作る料理に合うのはどちらのおろしでしょうか?甘いほう?辛いほう?そこをしっかりイメージしてからおろしを作るようにしましょう。おろしではなく大根サラダをつくるときも同様です。ぴりっとさせたければ皮をつけたまま、甘く感じたければ皮をむきます。

ちなみに私は家庭菜園を始める前は必ず皮をピーラーでむいていました。もちろん何も考えず盲目的に(苦笑)。

また、この辛味は火を入れるとうまみに変化します。そのため、大根ステーキを作るときは皮をつけたほうがいいと個人的には思います。火を入れたあとの皮目を雑味に感じるのであればむけばいいし、おいしく感じれば皮は残せばいい。

結局は作る料理を見据えて皮をむくかどうかを決めることが重要なんですね。

色鮮やかな大根

大根とひとことでいってもさまざまな種類があります。白い大根にも上が緑っぽいものと白いものがあります。前者を青首大根といいスーパーでは圧倒的にこの大根が多いですね。後者はさまざまな名称で地大根として直売所などで売られています。三浦大根、源助大根などが代表格ですね。味に違いは少しありますが使い方はほとんど変わりません。

キレドでは白い大根もありますが、主力は中まで薄紫色の薄紫大根と、中まで赤い紅芯大根です。

さまざまな色の大根

薄紫大根は日本の品種ですが紅芯大根は中国が原産。どちらも寒さに当たるととても甘くなるのが特徴です。サラダにする場合は皮をむいてから大きめに切るとより甘さを感じることができます。お刺身のつまのように細く切ってしまうと甘味を感じにくくなります。サラダにすると色味がとてもいいですね。美味しく色味もいいことからキレドではこの2品種が主力です。

全くキャラクターの違う黒い大根

日本やアジアではこうしたサラダにも向く大根が主力ですが、欧米ではあまりこの手の大根はみかけません。欧米での主力がこの黒大根です。

表皮が黒い大根

水分があまりなく辛味も強いのが特徴です。大根おろしには向きますが、サラダにはあまり向きません。はっきりいって生ではおいしくないです。

しかしこの大根は煮込みやグリルで真価を発揮します。1cm角くらいに切ってじっくり火を入れます。よくよく火を入れるのがポイント。中途半端だとこの大根の良さが出てきません。味噌汁からカレーからシチューから、どんな煮込み料理にもよく合います。キレドのアトリエではカーボロネロというイタリアのキャベツと黒大根を煮込んで食べるのは鉄板です。

フライパンで焦げ目がつくくらいまでソテーするのもおすすめです。グリルでも煮込みでもホクホクした食感を楽しめる大根です。ぜひ見つけたら試してほしい野菜ですね。

時期によって味が違う

キレドでは大根の主な種蒔き時期は3月と9月です。春蒔き大根は収穫時期が5月から6月にかけて、秋蒔き大根は11月から翌年の2月くらいまでになります。この春蒔きと秋蒔きでは味が結構違います。やはり甘いのは秋蒔きのほうですね。寒さにあたることで糖分が多くなります。

畑で成長中の大根

最近は寒さに当たることでおいしくなる野菜がブランド化されて売られています。雪ノ下にんじんや霜降り白菜などがそうですね。大根も同じなんです。ただ、このようにおいしくなるほうはよく知られていますが、時期によっておいしくならないほうはあまり知られていませんね。

春蒔きの大根は残念ながらエグミが出やすいです。特に葉は秋冬とは全く違う味になります。春から夏にかけては虫が出てくる季節。虫から身を守るためにエグミを出すんじゃないかと考えています。火を入れれば食べれないこともないですが、葉はやめておいてもいいんじゃないかなと個人的には思います。

大根にも一生がある

大根はいつもスーパーに並んでいますね。スーパーに並んでいるということは土から抜いているということですね。食べごろだということで私達の都合で抜いているわけです。では大根を抜かずにそのままにしておくと一体どうなるのでしょうか?

大根は分類的には一年草なので春に花を咲かせます。大根も花を???そう、あのまま土に植えとくと真ん中から茎を伸ばして花を咲かせるのです。

抜かずに置いておいた紅芯大根

この花芽は菜の花のように食べることができます。やはり大根の花芽なのでピリッとした辛味があります。では花はどんな味なのか、そして花をそのままにしておくと次は一体どうなるのでしょう?

オクラのお話でもご紹介した「野菜の一生を見る」。ここを掘り下げるのがキレドの真骨頂です。知らないことだらけですよね?考えるだけでわくわくしてきます。ぜひともキレドの畑かみなさんのお手元のプランターなどで確認してみてくださいね!

黒大根の出汁煮

・黒大根を1cm幅に切る
・うまだしでとった出汁に塩を加えたもので黒大根を弱めの中火でホクホクになるまで煮る。
(簡単ですがこれだけで本当においしくなります)