うまみを意識して料理をしたり、味わったりすることってありますか? 今世界中から注目されている和食ですが、その理由の一つはうまみにあります。昆布やかつお節など和食のだしはうまみの宝庫。ですが一般的なだしの素材に限らず、野菜やきのこ、肉、魚といったあらゆる食材にもうまみは豊富に含まれます。違った種類のうまみをかけ合わせれば、料理の味はぐんとアップ。そこで、さまざまな食材のうまみを探求しよう!という主旨でワークショップ「うまみの体験教室」が始まりました。
4月19日(金)に行われた第1回目のゲストは、フードユニット「つむぎや」のお二人。季節の野菜とうまみの食材を使ったスープ2種を味わいます。このイベントはウェブメディア『colocal』で始まった連載「うまみのくにの、おいしいスープ」との連動企画でもあり、連載で紹介したつむぎやの「土と緑のスープ」をアレンジしたものを直接味わえる機会でもあります。親子連れや20〜30代の女性を中心に、約20名ほどが参加しました。
料理のデモンストレーションが始まる前に、まずは味覚センサーをウォーミングアップ。参加者は各自、昆布やかつお、椎茸など複数のだしを飲み比べる、オリジナルだしのブレンドを体験します。
会場に用意されていたのは、6種類の粉末だし。昆布、かつお荒節、枯さば節、うるめ鰯節、焼きあご節、しいたけを自由にミックスしてお湯に溶き、味の違いを比べます。
まず私がやってみたのは、定番の昆布とかつおの合わせだし。うんうん、よく知る味。じんわりしたうまみが口に広がります。でもちょっと薄いかな。これに焼きあご節、うるめ鰯節、しいたけを加えると……全然違う!さまざまなうまみが溶け合って、味わいがぐっと深まりました。最終的に、全種類の入っただしがもっともおいしく感じました。
この6種類の天然素材は、本イベントの主催者であるやまやコミュニケーションズの扱うだしパック「うまだし」に入っている素材です。6つの味の掛け合せで、ひとつの素材の味わいとは比べものにならないほどリッチなだしをつくることができるのです。
飲み比べが終わったら、さっそくデモンストレーションの開始です。つむぎやはイベントや雑誌などで活躍する料理家金子健一さんとマツーラユタカさんの男性2人組。キャップ帽を被ってにこやかに挨拶する様子からは、楽しげな雰囲気が伝わってきます。
まずは、金子さんのすまし汁。うまみの食材には、ひと晩水に浸したえのき昆布水と、松本から調達してきたというスティック春菊を使います。
「昆布やかつお節のだしだけでなく、野菜からもうまみが出ます。まずは春菊そのものの味を試してみてください」
春菊の葉の部分と茎の部分を小さく切ったものを皆でまわし合って味わいます。茎は何度も噛むうちに、甘みとうまみがじんわり。葉の方にはしょっぱさもあって驚きです。こんな風に食材そのもののうまみを味わう機会は滅多にありません。
お次はスープのだしに使う、昆布えのき水。真昆布と干しえのきを一晩水に浸したうまみ液です。
「干しえのきは、えのきの産地、長野県中野市でつくられたものです。そのまま食べてもおいしくて、すごくいいうまみが出るんです」
乾燥した干しえのきをまわして試食。ぱりぱりした食感で、そのままでもおやつになりそう。
昆布だけ取り出して、えのきはそのまま、だしと一緒に火にかけます。調味料と春菊を入れ、フライパンで熱した桜えびをトッピング。完成したものをいただくと、だしのうまみに、春菊の香り、桜えびの味がアクセントになって、それぞれの味がしっかりする絶妙なバランスのすまし汁に仕上がっていました。
続いてはマツーラさんのスープ。こちらは、だしにいりこを使い、新ゴボウや玉ねぎ、じゃがいもなど旬の野菜を加えたポタージュをつくります。ユニークなのは、いりこの使い方。
「敢えて水に浸さず、いりこの内蔵と頭を取ったらそのままフライパンで炒めてスープの具材として生かします。今日はミキサーにかけますが、食べやすい大きさにほぐしておくといいですよ」
使用するいりこを、まずはそのまま試食。噛めば噛むほど、うまみが口の中に広がります。
いりこを炒めるフライパンに直接新玉ねぎを入れて透き通るまで。香ばしい、玉ねぎの香りがしてきました。
「いつも使う野菜も、炒めたり煮たりしているうちに自然とうまみが出ます」
ゴボウとじゃがいもを加えて炒め、水を入れて煮込んだら、最後ミキサーをかけて白みそを混ぜます。乳製品要らずの、濃厚ポタージュの出来上がり。味見すると、新玉ねぎやじゃがいもの甘さとうまみ、いりこのだしが混ざり合って濃厚な味わい。うまみを生かすだけで、こんなリッチなスープが楽しめるんですね。
試食を終えた皆さんに感想を聞いてみると。「天然素材でも、水出しすると簡単に使えることがわかりました」「きちんとしただしを取ると口の中でうまみが広がるのなんですね」「だしパックの中身がわかってよかった」「簡単でも手の込んだぜいたくな味わいを得られることがわかりました!」などの声が。
粉末だし、水に浸すだけのえのき昆布水、いりこを炒めてそのまま具材にしてしまうなど、手軽にスープのだし、うまみが取れる方法を教わり、目からうろこな体験でした。
「これが新しいうまみを発見する機会になったら嬉しい」と話すのは、主催者のやまやコミュニケーションズの太田美和さん。
「オリジナルのだしをブレンドすることなどなかなか経験できないですし、何より実際にうまみを味わってみると実感が違うと思うんです。今後は自分の味覚を知ることのできる、五味テストのようなものも取り入れていけたらいいなと思っています」。
「食」との新たな向き合い方を教えてくれるうまみの体験教室。次回も乞うご期待です。