恵みのくにへ。
vol.11 情熱の完熟いちごを味わう

野菜作りや農業で繋がる「縁」を大切にした農縁プロジェクトをはじめ、テレビやラジオで活躍中の川瀬良子さんが、豊かな食や暮らしが息づく地「恵みのくに」を訪れ、人や食との出会い、さまざま発見をレポートします。

 

こんにちは。川瀬良子です。

みなさん、いちごの旬はいつ頃か、ご存じですか?
とても覚えやすい覚え方があるんですよ!

いちごの旬は「1(いち)月~5(ご)月」
と、以前農家さんに教えてもらってから、この季節は毎年、大好きないちごが食べられるので浮かれております♪

今回は、そんな大好きないちごに会いに千葉県野田市のいちご農家さんを訪ねました。


利根川近くの畑地帯にある瀬能さんのビニールハウス

 

お話を伺ったのは瀬能ファームの瀬能淳矢さん。
瀬能さんは、4年前に就農したばかりの若手農家さん。夏場は野田の特産品でもある枝豆を育てていますが、2年前から冬場のいちご栽培を始めたそうです。

「ここ野田では、いちご農家さんは少ないです。人がやっていないことをやろうと思って、いちごに挑戦しました」と瀬能さん。

わずか2年目にして、その味と品質が好評で、近隣のスーパーではすぐに売り切れ。畑の直売所まで足を運んでくれるファンも多くいるそうです。

早速、ハウスの中に入ると…いちごのあまぁ~い香りが!
真っ赤な実が太陽の光でピカッと輝いています!
かわいい~!と、何度も言ってしまうほど、色、艶、形、全部がかわいい!

このハウスは約1000㎡で、約6000株のいちごが植え付けてあるそうです。
瀬能さんはお一人で管理されているのですが、この規模が一人で見られる標準の量、とも言われているのだそうです。
農家さんってすごいなぁ~!

瀬能さんが育てている品種は、「紅ほっぺ」。「紅ほっぺ」は私と同じ(笑)静岡県生まれ。

「甘味と酸味のバランスが良いですし、少し尖っていていちごらしい形をしているところも、僕は好きなんですよね」と瀬能さん。

早速、真っ赤ないちごを選んで、食べさせていただきました!
噛むと、果肉がクシュっとやわらかくて、いちごの香りが口いっぱいに広がったと思ったら、甘みもふわぁ~っと広がる!酸味もあって、本当にバランスが良い。
摘みたてなので、太陽のあったかさも感じられて、完熟のおいしさに感動!


瀬能ファームの紅ほっぺ。シールもかわいい。

 

紅ほっぺは、珍しい品種ではありませんが、瀬能さんの紅ほっぺが特に人気なのは、じっくり「完熟」させたいちごを出荷しているからだそう。

「完熟いちごを出荷!?」

スーパーに並んでいるいちごのほとんどは、完熟前に摘み取ってパック詰めしたものです。
完熟したいちごは、パックに詰めたらつぶれてしまうほどやわらかく、輸送時の揺れや衝撃に耐えられない、と聞いたことがあります。
こうしたデメリットが多い完熟いちごをあえて出荷する瀬能さん。

「やっぱり、おいしいものをダイレクトに届けたいんですよね。うちのいちごは、1パック600円。納得して買ってくれるお客さんとの関係性を大事にしていきたいです」

大切なお客さんに、おいしいものを届けたい。
瀬能さんのまっすぐな思いが伝わってきました。

「いちごは、収穫後に追熟することはないんですよ」

キウイやメロンなど、一部の果物は収穫後にどんどん熟して糖度があがるものがありますが、早摘みしたいちごの場合は、色は赤みを帯びてきますが、糖度があがっていくことはないそうです。

そう語る瀬能さんが用意してくれたのは、2日前に収穫しておいてくれたいちごと、今ここで摘み取ったばかりのいちご。早速、食べ比べてみました。

2日前に摘み取ったいちごは、その時は半分白い状態だったそうですが、ヘタの下まで真っ赤になっています。
食感は硬め、なんですが、スーパーなどで買ういちごの食べ慣れた食感です。

続いて、完熟いちご。
やわらかさがぜんっぜん違います!張りがあるのにやわらかい!
食感がこんなにも違うなんて。そして、香りと甘さがしっかり広がります。

色は同じような赤なのに、一番の違いは食感! このおいしさを知ってしまったら…。リピーターになるお客さんの気持ちがわかりますね~。

また、完熟いちごが出回らないのには、他にも理由がありました。

「いちごを完熟させるまで実に栄養を送り続ける株には、とっても負担がかかっているんですよ」

えっ!いちごのかわいい赤い実にばかり目がいって、株の事なんて考えたこともなかった!

1つの株は約半年間、実を生み続けます。1株から3.5パック、約1キロの実が収穫できると言います。

「実は、あくまでも結果なんですよ。母体(株本)が華奢だと、子ども(実)を生み続けることが難しくなるんです」

株への負担だけを考えたら早く実を採ったほうが良いそうですが、そうすると、完熟のおいしさはなくなってしまいます。
なので、収穫期になるといちご一つ一つを丁寧に見て回って、お客さんが納得してくれる実を見極めて、摘み取るのだそう。

お母さんに負担をかけてしまうかもしれないけれど、すべてはお客さんのため。いちごへの愛情が深いからこそ、株を“お母さん”のように例えられるんでしょうね~。

わ!いちごって、漢字で書くと「苺」。
草冠に「母」ですよね~!
諸説あるそうですが、ものすごく納得!


ハウス内を飛び回り受粉をするミツバチ。瀬能さんは、ハチの健康状態にも気をつけているそう。

 

「美味しい実にするためにも、太陽の光を受けて光合成をする葉はソーラーパネル。とっても大事です」

いちごのお母さんである株の元気を守るため、瀬能さんは常に葉や株の状態を気にかけているそうです。

「この広いハウス内の一株一株、すべて見て回るんですか??」
「最近は、遠目からパッとみても、調子の悪そうな箇所がわかるようになってきました(笑)」

なんと瀬能さんは、ハウス内を眺めた時に、ちょっとの変化にも気づけるように、普段から観察を重ね、感覚を研ぎ澄ましているそうです。

「いちごはデリケートで栽培が難しいです。まだまだ試行錯誤の繰り返しで…勉強も欠かせません」

いちご農家の先輩に話をきいたり、本を読んだりと、研究熱心な瀬能さん。2年目とは思えない知識と貫禄は、努力の賜物なんですね!

「ここ野田市は消費地が近いので、新鮮で美味しいまま届けられるのがメリットです。地元のお客様とのつながりを大切にしていきたいですね」

ゆくゆくは観光農園を開き、お客様との交流の機会を増やしたいと語る瀬能さん。いちごができるまでや、本当の美味しさなどを伝え、多くの人に食の大切さや食の楽しさを伝えていきたいそうです。

「これまでは作って提供するだけでしたが、これからは“伝えていく”活動もしたいと思っています」

瀬能さんは本当にお話が上手で、たくさんの質問をしても全て丁寧に答えて下さいました。
ハウスに入ったときと出る時では、同じいちごなのに見え方が変わりました!
そして、株に対しても「ありがとう」と言う気持ちが生まれていました。


奥様の樹里さんも一緒に。ポンプ小屋の塗装もいちごカラー!

 

小さないちごの中に、いちごへの情熱とお客様への想いがあふれた「恵みの国」がありました。
一粒一粒のいちごの中に農家さんの技術や知恵、自然の恵み、そして株など植物の力がこんなに詰まっているなんて、本当に驚きました。

瀬能さん、ありがとうございました。
瀬能ファームさんの観光農園、楽しみにしています!

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瀬能ファーム
千葉県野田市船形
https://m.facebook.com/senoufarm/
Instagram:nodanoichigo_senoufarm

衣装協力:AIGLE

川瀬良子 プロフィール

静岡県静岡市出身。
タレント、ラジオパーソナリティ。
16歳でモデルデビュー。2010年 NHK 「やさいの時間」の出演をきっかけに、野菜作りや農業への興味が深まり、農業の活性化や農家と消費者を繋ぐ「農縁プロジェクト」を立ち上げる。現在、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」TFM&JFN「あぐりずむ」「あぐりずむ WEEKEND」などのパーソナリティとしても活躍。自身のプランター栽培での"つまずき"を元にした書籍「川瀬良子のプランター野菜」発売中。