恵みのくにへ。
vol.10 福岡名物・明太子のおいしさのヒミツ

野菜作りや農業で繋がる「縁」を大切にした農縁プロジェクトをはじめ、テレビやラジオで活躍中の川瀬良子さんが、豊かな食や暮らしが息づく地「恵みのくに」を訪れ、人や食との出会い、さまざま発見をレポートします。

 

こんにちは。川瀬良子です。

今回の「恵みのくにへ」取材は、ぐんと足をのばして九州の福岡へ!
福岡名物といえば「明太子」ですよね。

明太子、と聞いただけで食欲がじわ〜と溢れてきます。
明太子だけでもおいしいですし、白いご飯のお供にも最高!パスタも良いですね〜!
あ、私、明太子大好きかも…と再認識(笑)
冒頭から、食いしん坊全開ですみません。

そんな大好きな「明太子」のおいしさのヒミツを探るために、福岡でも有数の明太子メーカー、やまやさんにお伺いしました。

 


こちらの巨大ポスターは今年の夏まで、博多駅のコンコースに掲げられていたもの。

 

社内には私の『うまだし』巨大ポスターが!
実は私、やまやさんの出汁パック『うまだし』のイメージキャラクターを務めさせていただいております!
こ〜んなに大きな自分を見たことがありません!
イメージキャラクターというだけでも光栄なのに、巨大ポスターまで。本当に嬉しいです。やまやさん、ありがとうございます!

まずは、私も愛用する『うまだし』工場を見学させていただきました。
工場内は、どこにいてもだしの良い香りが!

『うまだし』は、昆布・鰹節・うるめいわし節・原木栽培椎茸・枯鯖節・焼きあごの6種の国産だし素材をブレンドした出汁パック。
6種の素材は、やまやが生み出した“黄金比率”でブレンドされているそうで、塩や醤油などの調味料も入っているので、煮出すだけで(水出しでもいけますよ)、上品でおいしい出汁が簡単にとれるんです。

出汁としてはもちろんですが、パックを開けてだし粉末をパラパラと調味料のように使うこともできるので、炒め物や炒飯なども、これだけで味が決まります!


粉末にした6種のだし素材をブレンドしたもの。

 

この工場では1日約2500袋(30包1パックの商品)が生産されているそうです。特に、鍋や汁物がおいしい冬によく売れるそうで、お伺いした時期は、まさに繁忙期でした。そんな中、工場を案内してくださった工場長の佐々木俊二さん、ありがとうございました!

さあ、お次はいよいよ「明太子」工場を見学します!


やまやでは、一般向け見学コースを設けているそうです(※見学は要予約)。

 

まずは、一般向け見学コースで、明太子ができるまでのレクチャーと、ガラス越しに工場内の作業を見学させていただきました。

案内役の鳥羽 洋さんから、「明太子の卵は何の魚の卵でしょう?」と質問が。
もちろん、「スケトウダラ」ですよね!
ちなみに、タラコと明太子の違いは?みなさんわかりますか〜?
タラコと明太子の違いは、スケトウダラの卵巣を塩漬けしたものがタラコ。そのタラコを唐辛子などを使った調味液で漬け込んだものを「明太子」というそうです。


大きなスケトウダラと卵巣の模型。

 

さらに、やまやの明太子の3つのこだわりも、教えていただきました。それは…
①原料へのこだわり
②匠のたれへのこだわり
③熟成へのこだわり

1つ目の「原料へのこだわり」は、もちろんスケトウダラの卵へのこだわりです。
スケトウダラは、1月~3月、寒さが厳しい時期が最盛期で、オホーツク海やベーリング海など北の海で獲られているそうですが、やまやさんでは上質な卵を求め、ロシア漁船に社員さんも乗船することもあるそうです。3~4ヵ月間、船の上で過ごし、素材の選別を行っているそうです!

2つ目と3つ目のこだわりは、工場の中でご説明いただくことに…。
ということで、今回は特別に工場内に入れていただきました。


調味液を作るエリアは区切られ、社内でも資格を持った人しか入れないそう。

 

工場長の藤木和泉さんに、最初に案内していただいたのは、漬け込みの調味液を作るエリア。
2つ目のこだわりでもある、調味液「匠のたれ」は、やまや創業者が長年にわたり試行錯誤を重ねて完成させた匠の味。社内でも資格をもった人しか作れないそうです!

「ここが、うちで一番重要な工程です。この調味液の味にブレがあるとすべての明太子の味が変わってしまいますから」
やまやさんの明太子の味を決める大切な場所。いきなりすごいところを見せていただきました。

調味液には4つの素材が使われていました。
ひとつめは、お酒。福岡の名蔵元「喜多屋」のものを使用しているそうです。これが漬け込み液のベースとなり、やまやの調味液には、お水が一滴も使われていないそうです!

次は昆布。
北海道の羅臼(らうす)産の肉厚の昆布を漬け込み容器の中にそのまま入れるそうです。
まろやかで濃厚なうまみを引き出し、明太子に味の奥行きを与えています。

さらに「唐辛子」。
明太子のピリ辛を演出するのに欠かせないですよね。いろいろな種類の唐辛子を取り寄せ、何度も試して生まれた絶妙な配分でブレンドしているそうです。

そして、残りのひとつが華やかな香りの「柚子」。
九州産の香りが強い柚子を使用しているそうです。柚子の配合量は決まっているのですが、季節によって微妙に柚子の風味が変わるので、毎日味をみて調整しながらブレンドするそうですよ。柚子が入っているなんて、本当に驚きました。

続いて、「手もみ」の作業を見せていただきました。
調味液に漬け込む前に、別の工場で塩漬けされたタラコは、ここで人の手によって「手もみ」されます。これは、卵巣の中に固まった卵をほぐし、調味液を均等に染み込みやすくするために行う大事な作業なんだそうです。

「手もみは、“愛情を注ぐ”という言い方もしています」

手もみと言うのではなく、愛情を注ぐ…、愛とユーモアを感じます!
タラの卵巣はとてもデリケートなので、機械で手もみはできません。人がひとつひとつ丁寧に「おいしくな~れ」と想いをこめて行っているんですね。

そしてこの後、調味液に漬け込み、なんと「168時間」もの時間をかけて熟成されるそうです!!
これが3つめの「熟成へのこだわり」です。
「168時間」とは、約1週間。この熟成こそが、明太子のおいしさを決めるといっても過言ではないそうです。
やまやさんの明太子のコクとうま味の理由がわかりました。

調味液に168時間漬け込まれた明太子は、一晩かけて余分な調味液を取り除く「液切り」をした後、こちらで大きさや形、色ごとに仕分けされます。

ここでも、やっぱり人の手と目で仕分けの作業が行われます。皆さん、明太子をやさしく扱いながらも、手際よく仕分けていらっしゃいました。


明太子の計量は熟練された人が行なうと、ほぼ規定量(140g)になる正確さ!

 

選別された明太子は、包装するためのエリアへ運ばれます。
明太子を計量し袋に入れた後は、機械によってパック。さらに、金属探知機によるチェックまでするそうです。
包装の行程は機械作業が増えますが、人のチェックもしっかりされており、安心安全な商品作りが行われていることがわかりました。


本日、工場を案内してくださった工場長の藤木和泉さん。小さい頃からやまや明太子のファンだったそうです。

 

工場見学後、できたての明太子を試食させていただきました。

ほとんどの明太子は冷凍後に出荷されるそうですが、この“できたて明太子”は一度も冷凍されていないもの!
これは贅沢〜!

卵が一粒一粒輝いていて、輪郭が見た目にもはっきりとわかります。
口に運んでみると、あんなに小さいのに、一粒一粒の存在がしっかりとわかる!
プチプチと弾ける感じがぜんっぜん違います。
そして、柚子の華やかな香りもします。
いやぁ〜おいしいなぁ〜!!

“できたて明太子”は、市場にはなかなか出回っていないそうですが、やまや直営店や福岡空港では取り扱いがあるそうですよ。また、もつ鍋専門店『博多もつ鍋やまや』では、夜のメニューの1品として食べることができるそうです。ぜひ、“できたて”を味わってみてくださいね。

素材や味、作り方のこだわりはもちろん、素材を大切にし、おいしいものを届けようとするやまやさんの想いの中に「恵みのくに」はありました。“おいしくな~れ”と明太子に注ぐ愛情に溢れた「恵みのくに」でした。

やまやの皆さん、ありがとうございました。

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やまやコミュニケーションズ
https://www.yamaya.com/

衣装協力:AIGLE
撮影:工藤詩織

川瀬良子 プロフィール

静岡県静岡市出身。
タレント、ラジオパーソナリティ。
16歳でモデルデビュー。2010年 NHK 「やさいの時間」の出演をきっかけに、野菜作りや農業への興味が深まり、農業の活性化や農家と消費者を繋ぐ「農縁プロジェクト」を立ち上げる。現在、NHK「趣味の園芸 やさいの時間」TFM&JFN「あぐりずむ」「あぐりずむ WEEKEND」などのパーソナリティとしても活躍。自身のプランター栽培での"つまずき"を元にした書籍「川瀬良子のプランター野菜」発売中。