ニッポン全国、ヒトつながり。
vol.2「廣久葛本舗 十代目 高木久助さんとあさくら観光協会 里川径一さん」・前編

日本百貨店の鈴木です。

人繋がりがあればこそ一つながりにつながっていくご縁。2回目は、福岡県の本葛のお話し。

関東に住んでいますとあまり情報が入ってこないので忘れてしまっている方も多いと思いますが、九州の北部は昨年の今頃、2017年の7月に50年に一度といわれる大雨に襲われました。50万人を対象に避難指示・避難勧告が出され、特に朝倉市ととなりの東峰村では河川が氾濫、土砂崩れが発生し、たくさんの方々が被災されました。
私も今年2018年の春先に、人繋がりでたまたま被災状況を知ることになったのですが、今日の時点でもいまだ避難先の仮設住宅に住まれている方も多く、復興もまだまだこれからが本番、といった状況の様です。


災害後の三連水車

 

被災地について詳しく教えてくれたのは「お雑煮マニアックス」(プレジデント社)の著書でもあられる、お雑煮研究家の粕谷浩子さん。粕谷さんのことはまたこの連載でお話しすることが出てくると思います、彼女との出会いは濃くて長い話になると思いますので笑、今回は思い切って割愛。

粕谷さんが全国のお雑煮を研究される中で、朝倉の「茶碗蒸し」のような「蒸し雑煮」に出会ったのがそもそもの発端。朝倉市・あさくら観光協会がご当地グルメとして「筑前朝倉蒸し雑煮」を打ち出しているのですが、粕谷さんが秋葉原にあります日本百貨店しょくひんかんに、蒸し雑煮をお持ちくださっておっしゃいました。

「まだまだ復興進んでないんですよー!みっちぃも仮設住宅なんですよー!なんかしましょうよー!」
みっちぃって誰?粕谷さんはいつもこんな感じの素敵女子笑。
みっちぃはともかく、朝倉市、そして隣接する東峰村の惨状を聞いて、全く意識せずに毎日生きている自分を非常に恥ずかしく感じ、何とかできることはやろう、蒸し雑煮たくさん売ろう!それ以外にも地域の特産品があれば、それを売ってお金に変えよう!
日本百貨店の社是は「ニッポンのモノヅクリにお金を廻す」ですからね!そう考えました。

後々わかったのですが、みっちぃとはあさくら観光協会の名物男子・里川径一さん。
ちょうど東京での販売イベントがあるということで、さっそくわが社に遊びに来てくれることになりました。


お雑煮研究者の粕谷浩子さんと“みっちぃ”こと里川径一さん

 

が、待てども待てども来ないみっちぃ。目の前に座っている粕谷さんは2分に一回、時計を見ながら、ミッチーまだかな、みっちぃすぐ場所間違えるからな、みっちぃそもそもわかってるかなと立ったり座ったり迎えに行ってみたりと、ソワソワされている。しまいには、「鈴木さん、みっちぃどこですかね?」と質問を始める始末。いつまでこの状況が続くのだろうかと気が遠くなりかけたころ、「すんませーん、すんませーん!」さわやかに現れたのがみっちぃ。汗だくで、とにかく明るい!!!被災されている、仮設住宅に住んでいる、でもめげずにいろんな活動頑張っている、という事前情報だけだったので、なんとなく寡黙な男前を想像していたのですが…では名刺交換、となりましたら、「あー、あー、すんませーん、名刺ないんですわー、これでー」と言って、コースターのような紙に漫画文字で「里川径一」とマジックでサインし始めました。それを周りで見ている粕谷さんはじめ朝倉・東峰チームはにこにこ、ほほえまし気。これが平常運転ということなのでしょうか。

たぶんこの人に会って、嫌いになる人は一人もいないんだろうなぁと感じました。このパワーで市を、町を、地域を引っ張って行っているんだろうなぁ。定期的に、この地域の食材をふるまうイベントを当社の居酒屋、「日本百貨店さかば」で行って、被災地のこともきちんと伝えて、みんなに食べて応援してもらおう。食べるだけじゃなくて、現地に伝わる伝統技術の体験会などもできたら楽しい!日本酒を飲みながら!騒がしいみっちぃと粕谷さん、それを大人の目線で見つめる私含めた保護者たち。二人のわくわくパワーに押され、すぐにそんな話になりました。

そうとなれば悪い癖で、すぐ現地に行きたくなる私。きちんと自身で体感しないと、自信をもってお勧めできません。

2018年6月、さっそくみっちぃを訪ねて朝倉市・東峰村へお邪魔しました!当日はなんと、2017年の災害以来という大雨。避難勧告まで出てしまいました。川の流れをみて命の危険すら感じました。それでも災害時に比べれば降りは弱いとのことで、当時の皆様の恐怖感はいかほどのものだったのかと、想像を絶します。雨が降るたびにあの日のことを思い出してしまう。道の駅でおばちゃんがぽそっとつぶやいていました。昼近くなって雨も小降りになり、視察開始。

まず一か所目はウッドキャンドルづくりの現場。ウッドキャンドルとは?
災害時に被害を拡大させた一番の原因は20万トンともいわれる流木だったそうです。また、復興を阻害しているのも大量に道路に残された流木たち。処理費用をかけて流木を撤去することだけを考えず、この流木の価値を引き出して、売り物にできないか?そう考えたみっちぃが売り出したのが、ウッドキャンドルです。被災ゴミの流木を、今後災害が起きた時の暖房・調理器具にしてしまうという、明るいみっちぃならではの発想。製造開始時に加工工具や活動費を生み出す資金の調達のために行ったクラウドファンディングでは、50万円の目標に対して600万円の資金が集まりました。支援の輪は広がり、大雨の日にもかかわらず、当日も40名ほどの制作体験者がいらっしゃっていました。

雑貨はなんといっても小石原焼。昔から大好きな焼き物ですが、とびカンナが特徴的で、小鹿田焼の源流と言われる歴史のある焼き物です。一子相伝で伝統を引き継いでいく小鹿田焼に比べると革新的で、モノヅクリに新しいものを取り入れようという意識が強く、東京ではあまりお目にかかれないのですが、釉薬で様々な色目に塗り分けたマルワ窯さんのシリーズなどファンがつきそう。

お酒は篠崎酒造さんという酒蔵、国菊で有名ですね、にもお邪魔させていただきました。ここの麹甘酒は、全国的なブームの火付け役ともいわれています。

川茸は噂には聞いていましたがほんとに川でとれる海苔。採取の様子も拝見しました!プルプルして海苔という感じがしないんです。味は正直何にもしませんので、希少性から縁起物といいましょうか。値段は高い!高い理由がありますが。その値段のお話しもしっかり伝えながら売っていければなと感じました。

お味噌の学校では9か月になる営業部長(赤ちゃん)が迎えてくれました。土砂災害の直後に生まれたんですね、さぞお母さんは避難も大変だったことでしょう。ここでは味噌づくり体験ができる!!!!実際体験させてもらうと、それほど手間もかからず楽しくできるように、工程が工夫されているんです。これは東京でもぜひやりましょう!

まだまだ続く、朝倉・東峰珍道中。
次回後編では、朝倉市にあります十代目「本葛」職人のお話を。

 

本原稿を書き上げましたあと、西日本地域を豪雨が襲いました。被災された地域の方々に心よりお見舞い申し上げます。
朝倉・東峰地域も、甚大な被害に遭いました。東京にお店を持っている者として、引き続き私たちのできることをしっかりとし続けたいと考えます。
皆様にも復興支援に関しては発信を続けてまいりますので、どうぞご助力賜りたく、よろしくお願いいたします。
日本百貨店 鈴木

 

【第1回 朝倉・東峰 みんなで力を合わせて元気玉だっ!イベント】

2017年7月に続き、2018年も豪雨の被害に遭われてしまった朝倉・東峰。被災地の現実を知ってもらい、応援する人を一人でも増やしたい。日本百貨店さかばでは、被災地応援イベントを開催いたします!
7月28日は記事にも登場したみっちぃ、粕谷さんもいらっしゃいますよ。

■場所:日本百貨店さかば
千代田区丸の内1-11-1 PCP丸の内地下1階 グランアージュ内
http://nippon-dept.jp/archives/6120

■7月23日(月)~27日(金)11:00~15:00
特別ランチメニュー「本葛そば」を数量限定で提供

■7月28日(土)17:00~21:30 本イベント
蒸し雑煮、葛そば、盆だら・もみじ、だぶ汁などの郷土料理をはじめ、葛を使ったカクテルまでご用意! また、お味噌づくりワークショップ(1回500円)、篠崎酒造が醸す日本酒飲み比べ、地域を代表する焼物「小石原焼」物販など朝倉市・東峰村の食とモノの魅力まるごとお楽しみいただけます。

 

鈴木正晴さん プロフィール

株式会社日本百貨店 代表取締役社長
日本百貨店 ディレクター兼バイヤー
群馬県桐生市 PR大使

1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事㈱に入社。アパレル関連の部門で、素材、生産から小売部門まで幅広く担当。その後、ブランドマーケティング事業部にて、各種国内外のブランディングの仕事に携わる。海外とのやり取りを日々行う中で、逆に日本国内の商品および文化の価値を再認識。国内の“モノづくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。同年4月に株式会社コンタンを立ち上げ、made in JAPAN商品の海外輸出、国内外のブランドのブランディング業務を行う。 2010年12月には東京・御徒町に、「日本百貨店」をオープン。2013年9月に吉祥寺、2014年3月にたまぷらーざ、同年7月に池袋、2016年3月に横浜赤レンガ倉庫に出店。また2013年6月には食品専門の「しょくひんかん」を秋葉原にオープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出会いの場を創出し続ける。 直営店7店舗に加え、店舗コンセプトのプランニングや出店サポートの業務や、全国各地の小売店に“日本のスグレモノ”の卸販売も行う。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社)、「ものづくり『おもいやり』マーケティング」(実業之日本社)がある。