• 昆布とかつお節による、和食の基本だし。香りのよい一番だしはお吸い物や蒸し物など上品な料理に、コクのある二番だしは煮物や和え物、みそ汁に。昆布を数時間水に浸し、火にかけて沸騰直前で取り出し、火を止めたらかつお節を入れ1〜2分おいて布巾などで漉す。一番だしの素材をさらに煮出して追いがつおしたものが二番だし。
  • 昆布のみでとるだし。おひたし・煮物など素材の味や香りを大切にしたい料理に向く。昆布を数時間水に浸し、中火にかけて沸騰する直前に取り出して、アクを取ったら出来上がり。水に一晩浸けておくだけで水だしにも。12時間を超えると粘りが出るため要注意。醤油や酢に昆布をひとかけ浸しておくと、酸味や塩味がまろやかに。
    〈だしの素材〉 昆布
    昆布は国産の9割が北海道産。主に真昆布、羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布の4種類がある。育った環境で形や品質、味に違いがあるが、肉厚で褐色のものが良くいいだしが取れる。養殖ものは、だしのうまみは期待できない。表面の白い粉はマンニットといううまみ成分。うまみが溶け出すのに時間がかかるため長時間水に浸して。
  • かつおの香り豊かなだし。だしが主役となる料理、麺類のつゆやすまし汁、茶碗蒸しなどに合う。鍋に湯を沸かして沸騰したら火を止め、削りかつおを入れる。かつお節が鍋の底に沈むまで1〜2分おき、布巾などで漉す。うまみの溶け出す時間が短いため手早く。匂いの強い食材や癖のある素材と使うと、かつおの風味が生きない。
    〈だしの素材〉 かつお節
    鹿児島の枕崎や静岡の焼津が主な産地。製法の違いで「荒節」「枯節」に分けられる。魚を切り骨抜きして煮熟(しゃじゅく)した後、焙乾(燻しながら乾かす)して乾燥させたものが荒節。家庭で使われる花かつおは荒節を削ったもの。その後カビ付けをして熟成させると「枯節」に。荒節は香りがあるが、枯節の方がうまみがある。
  • 乾しいたけから取るだしで、しいたけの風味と香りを活かした、麺類のつゆや炒め物、汁物、煮物などに。精進だしには昆布としいたけを用いるのが一般的。乾しいたけにはうまみ成分のグアニル酸が豊富に含まれ、水に浸けて長時間かけてゆっくり戻すとうまみが出る。浸した水ごと火にかけて沸騰直前に弱火にし、20分ほど煮る。
    〈だしの素材〉 乾しいたけ
    乾しいたけの種類には、冬菇(どんこ)、香菇(こうこ)、香信(こうしん)の3種類がある。冬菇は肉厚で高級品、香信は平らで肉質が薄いため刻んで使う場合が多い。香菇はその中間。比較的肉厚で風味も良く価格も手頃。原木栽培と菌床栽培があり、味、香り、食感は原木産の方がはるかに優れている。大分県が全国一の産地。
  • かつおだしよりも酸味が弱く、素材の魚の風味がより出るのが特徴。主な原料はカタクチイワシ。しっかりしただしが出るため、みそ汁や麺のつゆ、煮物などにいい。煮干しを水に入れて中火で煮立て、アクを丁寧にすくい弱火にして5〜6分煮たら布巾で漉す。苦みが気になる場合は頭と腹を取り、煮立てすぎなければ澄んだだしに。
    〈だしの素材〉 煮干し
    原料にはイワシ、アジ、サバなど各地にさまざまな種類があるが、だしで使われる多くはカタクチイワシ。塩水で煮て乾燥させる。主に西日本、長崎や瀬戸内海沿岸で採れ、銀色で艶のあるものが良品。煮干しは昆布やかつお節に比べると歴史が浅く、だしとしての利用は明治以降に始まった。昆布との相性もよく、合わせだしに◎。
  • だしに用いられる食材には、昆布、かつお以外にもさば節やまぐろ節、焼きあご、干し海老、干し貝柱、きびなごなど、地域ごとに多様な食材がある。それぞれ異なる味や香りのだしが取れる。焼きあごは焼いて干すため香ばしく、煮物や麺類、汁物と幅広い料理に。さば節はコク、甘みが強いためうどんやそばのだしに使われる。
撮影:津留崎徹花/参考文献:『だし=うま味の辞典』(東京堂出版)