料理家、写真家として全国を飛び回り、各地に根ざした食材や料理を食べてきたminokamoさんの、ごはん旅日記。
幼い頃の食の記憶、旅で出会った珍ごはんや地元の方々の触れ合いなど食の思い出を綴ります。
こんにちは、minokamoです。
今回ご紹介するのは八丁味噌の産地、岡崎市で作られてきた「煮味噌」です。
岡崎市は、豆味噌の中でも代表格、八丁味噌でも有名な町。
八帖(はっちょう)町では、2軒の古い蔵が400年以上も八丁味噌を作り続けています。ここでは、人の身長を優に超える木樽に、職人のわざで3トンもの重石をのせ、2〜3年ゆっくり熟成させ作られます。
蔵を訪れたとき、この景色は圧巻で美味しい味噌ができるに違いない!と感じたのでした。
そんな味噌の産地で親しまれてきたのが「煮味噌」です。
煮味噌は名前の通り、季節の素材を豆味噌で煮込んだ料理。
日常に味噌を使う料理は、味噌汁、ぬた、田楽、いろいろあるけど、意外と味噌で煮る機会は少ない。煮るといえば、味噌煮込みうどん、味噌おでんを作ることはあるけれど、味噌好きな私でさえ日常の料理を「味噌で煮よう!」と思ったことはありませんでした。
さて、岡崎市のおかあさんたちに「煮味噌」を作っていただきました。
味噌は、豆味噌を使います。ちなみに、豆味噌文化の東海三県では、豆味噌のことを全般に「赤味噌」と言います。
作り方は赤味噌で煮ることが共通している以外は、材料などは家それぞれ。
私が食べた煮味噌は、里芋、白菜、えのき、鶏肉を炒め、そこへ水、煮干し、カツオぶしを入れて煮て、途中で赤味噌を入れて好みの煮汁の量になったら出来上がり。
煮干しとかつおぶしを一緒に煮込むのも特徴的。砂糖を入れる・入れない、練り物を入れてみたり、水分は飛ばしたり、煮汁を残して仕上げたり、各家庭それぞれ。赤味噌でも良いし、八丁味噌だとよりコクある仕上がりになります。
早速いただいてみると、なぜ今まで作らなかったんだろうと思うほどの美味しさ!
赤味噌のコクが素材にしみ込んでいて、ご飯にも、お酒にもよく合います!
戦前には、火鉢にかた土鍋をみんなで囲み、わいわいみんなで食べていたそう。
手元にある材料を、赤味噌で煮ることで美味しい一品になるので、ぜひ作ってみてくださいね。
岐阜県美濃加茂市出身。料理家、写真家。「ごはんで町を元気に!」をテーマに、各地でその土地に根差したメニュー開発、キッチンプロダクトのフードコーディネート、雑誌へのメニュー提案ほか、各世代がつながるイベントも開催。味噌料理も得意とする。各地の郷土食を取材し、紹介する活動も行っている。