うまい、楽しい、美しい!高知umami探訪・前編

今日のumamiのお話は、戦後から今に至るまで、連綿たる歴史を紡いできた高知のマルシェ「日曜市」。
400以上の店が集う、日本最大級の青空市で、土佐のうまみのもとを探します。
まるで東南アジアの屋台街を彷彿とさせるような、色と物と音の大洪水。
集う商品は1万以上。きっとあなたの探し物が、ここで見つかります。

1.3kmに連なる、週末の路上百貨店

高知城へと続く、高知市内の真ん中を目抜く追手筋(おうてすじ)、早朝5時。
高知一の繁華街の大通りとはいえ、まだ時刻は日の出前。
人も車もまばらなこの時間、のはずですが、毎週末の日曜日だけは、少し様子が違います。

荷台にぎっちり荷物を載せた軽トラックが高知県のあちらこちらから、この大手筋に大集合。

「おはよう、めっきり寒うなったねえ」
「今日は何を店に出すが?」
「お、柚子が出ゆうねえ。もうそんな季節かあ」

荷物を下ろす音、軽トラのエンジンの音に混じって、そんな声がガヤガヤ聞こえてきます。そう、今日は日曜日。
高知県内のあちらこちらから、自慢の品を持ちよった人々が自分の出店で直接販売をする日です。日曜日だけ歩行者天国へと様変わりする追手筋を埋め尽くす出店の数は、なんと400以上。全長1.3kmにも連なります。

左右に延々と続く屋台をキョロキョロしながら、目に飛び込んでくる商品のバラエティに胸が高鳴ります。子どもの頃にドキドキしながら巡った、夏祭りの屋台が思い出されるよう。
お店に並んでいるのは野菜、果物、干物、お花に干物、おまんじゅう、あんなものや、こんなものまで。
その品数、種類といったら、百貨店にも引けをとりません。

今が旬の新生姜。前日に掘りたてだそうです

並んでいる干物はすべて高知の漁港で水揚げされた魚を加工しているのだとか

ポン菓子屋さんも見つけました。身の回りのいろんな食品が、ポン菓子に加工されて販売されています

乾物屋さんもありました。ターメリックとして知られるうこんですが、春うこん、秋うこんでこんなに色が違うとは!

切れ味抜群の土佐刃物のお店を発見!新鮮な魚を家庭でも捌くため、高知では一家に1本必ず出刃包丁があるそうです。

においにつられて歩いていると、土佐備長炭でじゅうじゅうあぶる焼き鳥屋さんがありました

手作りのおやつを販売する老夫婦の甘味屋さんもありました。右手に見える透き通った四角いものは、日曜市のために手作りするわらびもちだそうです

とびっきりの一品が集まる高知の台所

目に飛び込むモノの嵐、耳に入るは歯切れよい土佐弁、鼻で吸い込む高知の香り、食べれば楽しい地のうまみ。日曜市は、まさに五感で楽しむうまみどころ!
この日曜市、実は出店できるのが、基本的に高知県内の生産者に限定されています。
出店にあたり、役所の日曜市担当者が県内全域の生産現場のチェックに訪れるというのだから、その徹底ぶりに驚きます。
裏を返せば、生粋の高知県産の商品と、高知県生まれの生産者さんが集まっているということ。

その生産者さんが、自分の畑や仕事場で作った「とびっきりの旬の逸品」を日曜市に持寄るのです。
その鮮度と品質はお墨付き。
ここは、季節とともにころころと装いを変える、高知の台所といえるでしょう。

さらに、日曜市では、出店者一人当たりのスペースが割り振られ、そのスペースの使い方は生産者さんに委ねられています。
いかに人目を惹くお店のレイアウトにするかも、生産者さんの腕の見せ所。
あたかもアートボードかのごとく、生産者さんは自分の店を飾り付けます。
ご覧あれ、この個性豊かな屋台の数々!

お店の骨組みから大きな柚子が下がっています

晴れた日にはパラソルをテント代わりに使う生産者さんも。

300年以上続いてきた高知の原風景

こんな異国情緒溢れる日曜市。その歴史の長さにもまた驚かされます。
日曜市が始まったのは元禄3年というのだから、300年以上も続いてきた計算になります。徳川綱吉が将軍だった江戸の時代、土佐藩第4代藩主・山内豊昌公が、藩の政策として街路市を認めたことが始まりといわれています。江戸時代以前は、開催日を事前に設定する日切市(ひぎりいち)でしたが、太陽暦の採用が始まった明治時代から毎週日曜日を定例としてきました。

戦争の影響で一時は途絶えたり、都市開発の煽りを受けて終了の危機を迎えたり、開催場所が変わったり、その長い歴史の中で何度も終止符が打たれそうになりました。
それが今に至るまで続いているのは、日曜市はなくしてはならない心のふるさとだと、地元の人々が立ち上がってきたからだそうです。
日曜市のある風景は、高知の原風景なのかもしれません。

そんな日曜市で手に入るのが、土佐料理に欠かすことのできないうまみ食品、柚子です。
土佐のうまみのもとである柚子は、日曜市と切っても切り離せない関係があるのでした。

そのお話は、また次回!

日曜市
住所:〒780-0842 高知県高知市追手筋
開催日:毎週日曜(1月1〜2日、よさこい祭期間は不開催)
開催時間:夏(4月〜9月) 5:00〜18:00頃、冬(10月〜3月) 5:30〜17:30頃