心とカラダを育てる食卓
vol.9 離乳食に最適!「蒸し調理」の魅力

食育料理教室の運営をするほか、イベントやメディア出演を通じて、様々な食育活動を行う管理栄養士で上級食育アドバイザーの板垣好恵さんが、子どもの心とカラダを健やかに育む食体験の大切さをお伝えします。
親子で味わいたい「うまみレシピ」もご紹介。ぜひ親子でお試しください!

 

離乳食にはたくさんの作り方がある中で、私は断然「蒸し調理」をおススメしています。なじみのない方もいるかもしれませんが、初めて固形物を食べる赤ちゃんにとって蒸し調理はとても適した調理法なんですよ。今回は、離乳食における蒸し調理の魅力についてご紹介します。

離乳食の役割

離乳食は、母乳やミルク以外の食品からも栄養を摂り、幼児食へと移行するまでの練習期間です。離乳食で大切なことは、食べる楽しさを教えてあげること。そして、さまざまな食材の味を経験することで味覚を育む役割もあります。食感、舌触り、温度、匂いなど、五感を使って食材のもつ本来のおいしさを味わいながら味覚を発達させていきます。

離乳食には「蒸し調理」がおススメ!

蒸し調理とは、水蒸気の熱で食材を加熱する調理法です。どんなメリットがあるのかみていきましょう。

① 食材のおいしさを引き出す
蒸し調理は、食材のおいしさを引き出せる調理法です。食材のもつ甘みやうま味は「40~60℃」で引き出されるといわれており、低温でじっくり加熱するのがポイント。蒸し調理は蒸気の穏やかな熱でゆるやかに火を通すので、甘みやうま味が豊かに仕上がります。食材がおいしく調理できると離乳食のすすみもよいですし、さまざまな食材の味を覚えることは味覚の発達にもつながりますよ。

②水分を保ち、やわらかく仕上げる
蒸気で加熱するので、食材の水分を逃さず調理ができます。母乳やミルクなどの水分に慣れている赤ちゃんは、しっとり食感を好みます。蒸し調理なら、かぼちゃや人参もしっとりホクホクに。100℃以下の穏やかな温度で加熱するので、パサつきがちな肉や魚もふっくらやわらかく、ジューシーに仕上げることができます。火通りもムラなく調理できるのも嬉しいポイントです。

③栄養素も損ないにくい
野菜のビタミンC、肉や魚のビタミンB群など「水溶性の栄養素」や、食材のもつ「うま味成分」は、茹でたりたっぷりの煮汁で煮込むと水分に溶け出してしまう性質があります。離乳食用に食材を長時間茹でたり煮たりするのは、栄養面でみるとかなりもったいないのです。蒸し調理は水の中で加熱をしないので栄養素の損失が少なく、赤ちゃんにも栄養満点&うま味たっぷりの離乳食を与えることができますよ。

レンジ調理との違い

電子レンジは時短&手軽で便利ですよね。しかし、離乳食では少し気になる点も。蒸し調理と違って急激に温度を上昇させるので食材のおいしさを引き出せず、加熱ムラもできやすいです。食材の水分が飛んでパサつきやすく、加熱をしすぎると焦げ付くこともあるので、加熱時間にも注意が必要です。離乳食に用いる場合はこのような特徴を意識してうまく活用するとよいですね。

蒸し調理におススメの食材

かぼちゃ、人参、玉ねぎ、さつま芋、じゃが芋、大根、かぶ、キャベツなど、もともと自然の甘みをもった野菜は蒸すことでよりおいしさが増しますよ。鶏肉や白身魚もふっくらやわらかく仕上がるのでおススメです。注意が必要なのが、ほうれん草などの「アクの強い食材」です。アクは苦みやえぐみの原因となりますので、そのまま蒸すのはNG。茹でるか、蒸す前にしっかりと水にさらすなどしてアクを除きましょう。

蒸した食材は、月齢に合わせた形状にペーストや刻むなどして与えてあげてください。蒸し調理は鍋やフライパンを使っても手軽にできますので、本格的な蒸し器がなくても大丈夫です。蒸すだけで食材が本当においしくなるので、離乳食だけでなく、ご家族みんなで味わってみてくださいね。

<親子でおいしい「うまみレシピ」>

さまざまな素材に含まれるうまみをかけ合わせた、親子で一緒においしさを味わえるレシピをご紹介します。うまみの相乗効果の活用で、塩分控えめでも満足感はバッチリ!おとなの健康維持にもおすすめなヘルシーレシピです。

かぶとハムのマリネ

かぶのうまみ「グルタミン酸」×生ハムのうまみ「グアニル酸」でうまみUP!
簡単にできる副菜レシピです。甘くてみずみずしいかぶに、塩味のきいた生ハムが相性ぴったりですよ。かぶは大根に、生ハムは普通のハムに代えてもOKです♪

<材料:2人分>
かぶ 1個(小さめなものなら2個)
塩 少々
生ハム 30g
貝割れ大根 適量
(a) 酢 大さじ1/2
(a) オリーブオイル 大さじ1/2
(a) 砂糖 小さじ1/2
(a) 塩 少々
黒こしょう 適量

<作り方>

① かぶは皮をむき縦4等分に切り、いちょう切りにする。塩をもみこみ、しんなりしたら流水で洗い水気をきる。生ハムはひと口大に切り、貝割れ大根は根元を除く。

② ボウルに(a)を混ぜ合わせ、かぶ・生ハム・貝割れ大根を加えて混ぜ、しばらく置く(10分~)。

③ 器に盛り付けて、黒こしょうをふる。

板垣好恵 プロフィール

管理栄養士/上級食育アドバイザー
全国展開する料理教室にて、料理・パン・ケーキの講師業と集客営業に従事。本社へ異動後は管理栄養士としてレシピ本出版、講演、食事指導、法人タイアップ企画など多数事業に携わる。現在は、食育活動を軸としたイベント出演、レシピ開発、執筆、保育園の選任管理栄養士を行う傍ら、食の専門家を集めたユニットFoodRingの代表を務める。2019年より土浦にて食育料理教室「ぼくらのキッチン」を運営。

◆食の専門家ユニットFoodRing
https://foodring.jp/

◆食育料理教室「ぼくらのキッチン」
https://www.bokurano-kitchen.com/